バッハ 『平均律クラヴィーア曲集』 ルイ・ティリ(オルガン)
本日、我が家にアトラス・チェンバロがやってまいりました。チェンバロのある生活というのは若い頃からの夢でありました。こうしてご縁があって、それを叶えることができました。ありがたいことです。
徐々に調整などをしていくつもりです。状態は良いので、充分本格的な使用に耐えうると思います。
さて、その貴重な楽器を譲ってくださった方が、このCDを貸してくださいました。
私も本当にいろいろな「平均律」を聴いてきましたが、これは初めてです。そして、これがまた素晴らしい演奏だった。
「クラヴィーア」という言葉は「非オルガン鍵盤楽器」を表す語だと理解していますので、このオルガン版は歴史的、学術的には邪道ということになるかもしれませんが、バッハ自身もこの曲集をオルガンで一度は弾いたことがあるだろうと想像されますので(逆に弾いていない確率の方がずっと低いのでは)、これはこれで間違いではないと思います。
「平均律」の中には、明らかにオルガン的な効果を狙ったものが散見されます。あるいは、オルガン的に音を伸ばしていたり、ぶつけたりしたい部分がありますよね。
特に曲のおしまいによくあるオルガンポイント(オルゲルプンクト)。たとえば有名な第1巻の第1番の、あのフーガの最後も「ド~〜〜」とずっと鳴らし続けたいところです。
たとえばチェンバロやピアノであれをあの通り弾くと、最後の終止和音の最低音のドがもう消えちゃってるんですよね。だから、なんとなく締まりが悪い(笑)。
かと言って、最後におまけのように最低音を弾くのもなんとなく憚られる。これって鍵盤奏者の悩みの種だったりするわけです。
それがオルガンならば楽譜通り、つまりバッハの意図の通り響くわけですから、これはこれでやっぱりありだと思います。
いやあ、それにしても、その冒頭の有名な前奏曲からして、この演奏は驚きでした。オルガンだからゆっくりやるのかなと思いきや、驚くほどの高速演奏。これがまたカッコいいではありませんか。
今、このCDは手に入りにくくなっていますが、iTunesで購入、また試聴できますのでぜひ。
1973~1977年の録音ということですから、今となってはかなり古い時代の演奏になりますけれども、いやいや全然古びていない…どころか、非常に新鮮に聞こえます。
曲の解釈はもちろん、ストップの選択、ペダルの使用も非常によく考えられています。
フランスのオルガニストであるルイ・ティリは、どちらかと言うと近代のオルガン作品の演奏が得意だったようですね。オルガンも歴史的オルガンではなく近代的な楽器のようです。
しかし、そうした「古楽」にとらわれていない姿勢が、結局のところ功を奏しているのではないでしょうか。
バッハはもともと時代性を大きく超えた、ある種抽象的な存在ですからね。
今こうしてこの演奏に出会えたことも何か因縁を感じます。本当にご縁というのはありがたいものです。私も頑張っていただいたチェンバロで平均律に挑戦してみたいと思います。もちろん「非平均律調律」で。
↓それにしてもなんでAmazonではジャンルがロックになってるんだ?(笑)
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コメント
蘊恥庵庵主さん、いつもブログというか、一日一食生活を参考にさせていただいております。
あの〜チェンバロ凄いですね!
どうやって手に入れられたのですか?
私もバロック音楽が好きなので、とても羨ましいです。
教えてください♩
投稿: あややっぴ | 2013.09.23 16:47
あややっぴさん、こんにちは。
コメントありがとうございました。
今回はホントに不思議なご縁で知り合いから無料で譲っていただくことになりました。
30年以上にわたって「ほしい、ほしい」「来い、来い」と妄想し続けて結果でしょうか(笑)。
その過程でいろいろな方のチェンバロを触らせてもらって妄想を絶やさなかったのがポイントですね。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2013.09.25 13:17