『大東亜共同宣言』を聴く
70年前、昭和18年の11月、東京で大東亜会議が開催されました。
今日はその会議で採択された「大東亜共同宣言」を復習してみましょう。
私もそうでしたが、ほとんどの現代日本人はこの宣言をちゃんと読んだことがないでしょう。
戦後教育のある傾向によって、私たちは、たとえば大日本帝国憲法や教育勅語やこの大東亜共同宣言などを「読まずして」批判する、あるいは拒否、嫌悪することがほとんどです。
もちろん私は、戦前、戦中の様々なイデオロギーや言葉に、単純に賛同するわけではありません。しかし、かと言って、最初から無視し拒否するような姿勢はとりたくありません。
当時の表現者の意図はどうであれ、言葉というのは未来にも永劫意味を持ち続けるものです。その現代的な意味を確定していくのが、表現者にとっての未来人である私たちの義務であると思います。
そういうつもりで今日は大東亜共同宣言を聴いてみましょう。「読む」だけでなく「聴く」ことにより、私たちの解釈はより先鋭化します。
さて、大東亜会議の参加国、参加者は以下のとおり。
日本:東條英機内閣総理大臣
中華民国(南京)国民政府:汪兆銘行政院長
満州国:張景恵国務総理大臣
フィリピン共和国:ホセ・ラウレル大統領
ビルマ国:バー・モウ内閣総理大臣
タイ王国:ワンワイタヤーコーン親王
インド:自由インド仮政府首班チャンドラ・ボース
この会議に対する戦後の評価も当然のことながら厳しいものです。大東亜共栄圏構想自体、そして大東亜戦争自体がハナから否定される傾向にあるのでしかたありません。
しかし、明らかな人種差別の傾向が内包されている米英の大西洋憲章に対して、当時アジアが危機感を持つのは当然のことであり、また、その防衛的な危機感の統合を日本がリードすることになったのは、歴史的な必然であって、到底「間違い」とは言えません。
一方で、会議のあり方や共同宣言に対して、参加者から不満があったのもたしかです。しかし、ある意味ではそのように一枚岩でないところがリアルでもあります。つまり、傀儡を集めた形式的な会議であったとは言い切れないところに、この宣言の現代的な意味を見出すこともできるということです。
これは、大東亜共栄圏構想、大東亜戦争の大義の本質に関わるところになりますが、米英の帝国主義、植民地政策に対抗し、人種差別を撤廃して、アジアの自主独立を目指すという共同宣言の内容は、その言葉の意味を純粋に受け取れば非常に素晴らしいものであり、また実際にかなりの部分で現実化したと言えなくもありません。
少なくとも、当時の多くのアジアの民が、高邁な理想を抱いてこの言葉を純粋に信じて戦ったことは事実です。それを「一部の政治家、軍人にだまされていた」と簡単に決めつけてしまうのは、あまりに失礼な態度です。たとえそういう一面があったにせよ、「信じられた言葉の意味」の方に目をつぷるのはフェアではありません。
ぜひ皆さんも、現代人(過去から見ると未来人)の立場で、これらの言葉の現代的な意味をフェアに確定しようとしてみてください。
では、文字を読みながら、こちらをクリックして音声をお聴きください。当時の共同宣言採択時の貴重な音声です。
抑〻世界各國ガ各其ノ所ヲ得相倚リ相扶ケテ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ世界平和確立ノ根本要義ナリ
然ルニ米英ハ自國ノ繁榮ノ爲ニハ他國家他民族ヲ抑壓シ特ニ大東亞ニ對シテハ飽クナキ侵略搾取ヲ行ヒ大東亞隷屬化ノ野望ヲ逞シウシ遂ニハ大東亞ノ安定ヲ根柢ヨリ覆サントセリ大東亞戰爭ノ原因ココニ存ス
大東亞各國ハ相提携シテ大東亞戰爭ヲ完遂シ大東亞ヲ米英ノ桎梏ヨリ解放シテ其ノ自存自衞ヲ全ウシ左ノ綱領ニ基キ大東亞ヲ建設シ以テ世界平和ノ確立ニ寄與センコトヲ期ス
一、大東亞各國ハ協同シテ大東亞ノ安定ヲ確保シ道義ニ基ク共存共榮ノ秩序ヲ建設ス
一、大東亞各國ハ相互ニ自主獨立ヲ尊重シ互助敦睦ノ實ヲ擧ゲ大東亞ノ親和ヲ確立ス
一、大東亞各國ハ相互ニ其ノ傳統ヲ尊重シ各民族ノ創造性ヲ伸暢シ大東亞ノ文化ヲ昂揚ス
一、大東亞各國ハ互惠ノ下緊密ニ提携シ其ノ經濟發展ヲ圖リ大東亞ノ繁榮ヲ增進ス
一、大東亞各國ハ萬邦トノ交誼ヲ篤ウシ人種的差別ヲ撤廢シ普ク文化ヲ交流シ進ンデ資源ヲ開放シ以テ世界ノ進運ニ貢獻ス
Amazon 大東亞戦争は昭和50年4月30日に終結した
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