もう一つの富士山(その5)丹下健三『大東亜建設忠霊神域計画』
今日は丹下健三の100歳の誕生日。Googleのトップロゴにも「世界のタンゲ」が登場していてビックリ。
古き良き時代の新しき悪しき漢であった丹下健三。最近、ますます彼の魅力に惹きつけられているワタクシであります。
「古き良き時代の新しき悪しき漢」は「新しき悪しき時代」においては「古き良き漢」となるわけですよ。最近、そんな男たちに(いや女にも)異常に興味があります。
丹下健三については、私も過去いくつかの記事を書いてきました。ちょっと自分自身でも復習してみます。何を書いたか全く覚えていないので(笑)。
追悼 丹下健三 幻の迷作『駿府会館』
『丹下健三 いにしえから天へ地平へ』 ハイビジョン特集 シリーズNIPPONの巨人
丹下健三+メンデルスゾーン=聖なる俗 その1
丹下健三+メンデルスゾーン=聖なる俗 その2
お〜、なるほど。なかなか面白い(笑)。勉強になりますな(自分で言うな)。ま、それほど私は書いたこと言ったこと思ったことを忘れてしまう人間なのです。
そんなわけで、今日は忘れないうちにこの話を書いておきます。
皆さんは丹下健三のデビュー作をご存知ですか。実はそれこそが「もう一つの富士山」に関係しているのです。
富士山吉田口登山者が20万人を超えた昭和17年、すなわち富士山が国威発揚、防共の象徴としてピークを迎えつつあった1942年に、日本建築学会が「大東亜建設記念営造計画」というコンペを開催しました。
そして若き丹下健三が出品した「大東亜道路を主軸としたる記念営造計画–主として大東亜建設忠霊神域計画–」が第一位を獲得します。
昭和17年はまだ有利に戦局が動いていた時期。コンペの趣旨も「大東亜共栄圏確立ノ雄渾ナル意図ヲ表象スルニ足ル記念営造計画案ヲ求ム」というものでした。
丹下案は、その趣旨に見事に適うものだったと言えます。東京(皇居)から富士山に向かって「大東亜道路」と「大東亜鉄道」を走らせ、富士山東麓を「忠霊神域」にしようという壮大なプランでした。
大東亜という発想は、丹下の当時の思想とも合致するものだったのではないでしょうか。彼は建築において、ヨーロッパ・モダニズムをいかに日本的なモノで凌駕するかというテーマを持っていたのです。
その一つの答えとして「皇居」と「富士山」という二つの「象徴」を結び、そこに英霊のエネルギーを集中させようと企みました。その中心基地となるのは富士山を借景とした鉄筋コンクリート構造寝殿造りの神殿。
やはりここでも富士山は現代とは違った意味を持ってそびえ立っています。
この丹下の発想は、戦後さまざまな人たちによって提案された富士山麓首都移転計画、あるいは知られざる仲小路彰による山中湖畔地球戦没者慰霊施設の計画、あるいは皇居富士山遷宮計画などとも重なってきます。
また、私なんかからしますと、富士高天原復興運動ともつながっているように感じられます。時空を超えた「日本的なモノ」のエネルギーがうごめいていますね。
この設計図、今ではいかにも丹下らしいと簡単に評価できますけれども、考えてみると当時としては(いや現代においても、未来においても)かなりぶっ飛んだアイデアだと言えます。
この丹下案をNHKの番組のためにCG化したものがありました。その「真剣なぶっ飛びぶり」を擬似体感してみてください。
実は、この気宇壮大なプランは縮小化されて戦後に実現しているのです。広島ピースセンター。それもまた何か象徴的ですね。
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