もう一つの富士山(その3)超大型戦略爆撃機『富嶽』
夏休みに入った途端、なんだか妙に忙しくなって記事の更新が遅れております。元気に生きておりますので御心配なく(笑)。
さて、今日は「もう一つの富士山」シリーズのその3。もうお分かりのとおり、このシリーズは「ナショナリズム」のシンボルとしての富士山を紹介しています。
その3は戦後に行こうかと思っていたのですが、一つ戦争末期の大切な「文化」を忘れていたので、そちらを紹介します。
そうそう、戦争末期ということでいうと、かの硫黄島の市丸利之助海軍少将の歌集も忘れてはいけませんね。
天空の青と大地の紫と富士の白雲まじはれる朝
艦砲の的ともならん爆撃の的ともならん歌も詠むべし
その記事にも書いたとおり、当時の富士山は「日本国の、そして大和魂の象徴であり、自己の精神の気高さの指針であり、武運長久を約す守り神であり、雄々しさと繊細さを併せ持つ和合のシンボルで」あったわけです。
さて、戦局も厳しくなった昭和18年に、「強く正しく美しい日本」の象徴として本格的に製造が計画された一つの「富士山」があります。
それが「富嶽」です。ご存知の方も多いかと思いますが、これは米国の本土爆撃のために製造が計画された超大型戦略爆撃機です。
その全長はなんとB29の1.5倍。6発エンジンで航続距離はB29の3倍の2万キロ弱。ほとんど無謀というか、荒唐無稽なシロモノです。
先ほどアメリカ本土爆撃と書きましたけれども、実際には太平洋を渡って米本土を爆撃したのち、大西洋を渡ってドイツで燃料補給、そしてソ連を爆撃して日本に戻ってくるという、それこそ4万キロで地球を一周するというトンデモナイ計画があったようです。
まさに「富嶽」の名にふさわしいスケールではありますが、一方でどこか夢物語的であり、しかしまたどこか実現可能なような、そして戦局を一発逆転してしまいそうな、そんな現実的な部分もある、まさに「生黄泉(なまよみ)」な爆撃機であります。
計画の端緒は昭和17年、かの中島知久平(中島飛行機創始者)の「必勝防空計画」。その中の「Z飛行機」です。
「Z」という文字の持つ響きとイメージのとおり、まさに「最終兵器」だったのでしょうね。
私も小学生の頃、太平洋戦争の本を読みあさっていた中で、この「富嶽」のイラストに触れて、非常にドキドキワクワクした思い出があります。
私なんか昭和39年生まれですから、戦後がまさに終わったと言われた頃に生まれた世代ですし、高度経済成長の東京に育った現代っ子です。しかし、実際にはノスタルジーとしての戦争が色濃く残っていた中に育っていました。
それも「太平洋戦争」は間違った戦争で日本は負けて当然だったというような論調が多かったはずなのに、どこか理屈ではなく「いや大東亜戦争は聖戦で本当は日本は勝つべきだった」という無意識の意識が働いていたように記憶しています。
もちろん、そんな言葉で表現されていたわけではありません。本当に少年的な夢想の類です。まあ、それがのちの宇宙戦艦ヤマトなどの作品にはまる原因の一つだったのだと、今になってみるとよく分かります。
そうそう、私はヤマトの前にすでに、なんだか宇宙戦艦モノのオリジナルマンガを描いていたんですよね。あのノートどこかにあるかな。捨ててはいないはずだけど…。
そのマンガにもたしか巨大爆撃機が登場していたと思います。宇宙戦争なのになぜかプロペラ機でしたが(笑)。
今はもうそんなマンガを描くエネルギーはないけれども、なんとなくこのフジミ模型の1/144スケール「富嶽」は欲しいような気がする…。
大人になったからこそ得た経済力で手に入れてしまおうかな。いや、今は今で強力な敵国(抵抗勢力)に押され、息も絶え絶えであります(笑)。
模型ですら夢物語なのですから、実物の「富嶽」はいったいどれだけの男の夢やロマンが詰まっていたのでしょう。
いや、今でも本気で考えます。もし「富嶽」が昭和19年の内に完成していたなら…と。
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