メディアとしての火祭り
今年も夏が終わるなあ…吉田の火祭りに行くと毎年感じることです。
昨年は「火祭り」になる前の「イヴ」と「御動座祭・発輿祭」について書きましたが、今年は一般的な火祭りについて書きましょう。
今年は富士山世界文化遺産登録のこともありまして、非常に多くの方が「火祭り」にいらしていました。特に外国人の姿が目立つ。
そう、外国人の方はちゃんと浅間神社や諏訪神社にお参りするんですよね。日本人、特に地元民は屋台の並ぶ本町通りに行くだけ。
まあ、それでいいとも思いますが。
毎度火祭りを見物しながら思うのは、「火で火を鎮める」「火をもって火を制す」というパラドックスですね。
おそらく西洋の鎮火祭であれば「水」が主役になることでしょう。あるいは火を燃すにしても、鎮火の儀が中心になるでしょう。ところが、ここでは点火式がクライマックスになる。
これは日本の宗教観、自然観、哲学の表れです。最近よく書いていますが、平和や調和の実現にはある種の暴力性が必要なのです。「和魂:荒魂」=「9:1」というやつですね。
違う言い方をすると、たとえば火祭りであれば、富士山の噴火という大火を松明という小火によって鎮めるということですから、「大難を小難にする」ということです。
この発想は非常に重要です。人間も自然の一部ですから、この発想が通用します。たとえば、怒りや乱暴なども、それにフタをして抑えこむよりも、小出しにした方がいいことがありますよね。
それから、最近も喧しい領土問題をはじめとする外交も、やはり握手をしながらもう片方の手は拳を振り上げておいたほうがいい。これもまた元は「荒魂によって和魂を召喚する」という発想なのです。
いずれにしても、コントロール可能な「荒魂」が平和や調和を安定的なものにするということなんですね。これは日本人が忘れてはいけない思想であり、智慧です。
表面的な平安には必ず水面下のストレスがあるものです。それを恣意的に小出しにしてやること、ガス抜きすることは大切ですよね。
日本の祭はそういう設定された荒々しい非日常であることが多い。火祭りは根源的には諏訪の祭であると私は考えていますが、諏訪の御柱祭なんか、まあちょっとやりすぎなくらい「荒魂」が発動しますよね。
諏訪が出雲の荒魂、和魂と深く関係しているのも偶然ではないでしょう。
こうして考えてみますと、祭というのは「メディア」であることが分かります。ただ単純に神と人をつなぐという意味でありません。
火祭りで言えば、神(=大自然)である富士山の噴火を、人間がコントローラブルな範囲で演じて見せているわけじゃないですか。そういうレベルでのメディアということです。
「ものまね」にも通じると思います。「モノを招く」「モノを真似る」ことによって、瞬間でも神人一体になる。これが祭の本質です。
そんなふうに日本中の祭を見てみますと、いろいろと面白い「比喩」を発見できると思います。
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