『大江戸・妖怪ブーム』 NHK BS歴史館
不思議なものの象徴、説明できないものを担っている妖怪。
録画してあったものを観ました。これが実に面白かった。興味深かった。小松和彦さんと荒俣宏さんが妖怪について語る…それだけでも楽しい。お二人とも現代の妖怪ですからね(笑)。
この1時間の番組を観れば日本が分かります。大げさでなく、これを教材に使えばいいのですよ。実際使いましょう。
宗教ではないし、歴史観とも基本関係ない。しかし、いくら唯物論者でも否定しきれない「何か」があります。
私の言う「モノ・コト論」の「モノ」のキャラクター化(一種の擬人化)が妖怪です。私にとっての「モノ」はまさに説明できないモノ。一方「コト」は説明できるコト。
言うまでもなく西洋文明は「コト」をひたすら求めてきました。それに対して東洋、特に日本は「モノ」を重視してきた。
番組でも語られていたように、科学が象徴する西洋文明は、そういう「モノ」を敵視し排除する方向で進歩してきました。
しかし、日本では妖怪を「愛する」、すなわち「モノ」にこそ世の本質を見て大切にしてきた。
磯田道史さんが、幽霊は「朱子学と仏教の失敗(道徳と供養の失敗)」と語っていましたが、まさにそうですね。外来のコトではやっぱり私たちの生活は統治できなかったのです。
その裏には(宗教ではない)「神道」が底流しています。
明治維新後は「コト」の勢力は貨幣と武器という形でさらに強力になり、日本も国を挙げてそちらに舵を切ったため、妖怪(モノノケ)たちは地下に潜るようになってしまいました。
しかし、今でも存在していることはたしか。夏になると毎年出てきますからね(笑)。
「妖怪LOVE」…妖怪との付き合い方が日本文化の成熟度の高さを表している。なるほどそのとおりですね。文明ではなくて文化ですよ。
番組後半は平田篤胤にスポットライトを当てていました。秋田出身の奇才、そして最近の私にとっては仲小路彰の思想のルーツの一つとして興味を持っている篤胤。
う〜ん、この番組を観て、あらためて思いましたねえ。秋田出身の平田篤胤と佐藤信淵、ちゃんと勉強しなくちゃ現代日本は分かりません。紹介されていた篤胤の言葉です。
「外国の説は仏教のも儒教のもみな自分の都合のいいように推量して定めた妄説(みだりごと)である。西洋人は天地のことを観察し考えられる限りのことは考え、その考えの及ばぬ先のことは神の御心とする」
「まず何よりも第一に大倭心(やまとごごろ)を堅めなくてはならない」
私のセンスからすると、篤胤は本居宣長よりもずっとスケールの大きな学者です。そして、篤胤や信淵は正しく評価されていないと感じます。
妖怪を弾圧するとそれがまた形を変えて、たとえば風刺やユーモアとなって復活する。これこそ日本の「モノ」の力強さです。それと同じように、篤胤や信淵を「皇国史観」や「大東亜共栄圏」のルーツだなどと「コト」で片付けても、必ずその本体は日本の伏流水となって、そして時々地上に吹き出してきます。
それが、たとえば出口王仁三郎であり、仲小路彰なのであると思います。
いやあ、本当に面白かった。外国人に日本を理解してもらうのにも良い資料となるでしょう。とりあえず教材として使います。
荒俣さんが「ずっと妖怪に興味を持ってきた。そのせいで学校でいやな思いをしてきた」と言っていました。そこにこそ、日本の教育、学校、教師の問題点がありますね(苦笑)。
再放送を望みます。
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