『近未来ノベル 富士山大噴火』 柘植久慶 (PHP文庫)
明日は防災の日。NHKでは関東大震災に関する番組が放送されていました。「MEGAQUAKE III 巨大地震」の第3回「よみがえる関東大震災~歴史的都市災害の教訓」。
結論としては房総半島沖の歪みがかなり溜まっているということでしたね。次の関東地震は大正関東地震より震源が南にあり、さらに規模も大きくなるというわけです。
私は、2011.3.11の余震として房総半島東方沖のM8レベルを予想していますから、下手をするとその両方が同時に発生するかもしれません。そういうことも想定しておかなくてはなりません。
富士山についても、ずいぶんいろいろと不安を煽るような言説が横行しています。ある意味ではこの本もそうかもしれません。時機をつかんだ作品であるとも言える。
もちろん、富士山の噴火についても、東北の巨大地震と同様に予想に反して今起きるかもしれません。それは否定しません。しかし、富士山そのものに住む者として、私は当然のように毎日その兆候を捉えるべく各種の観測(もちろん素人レベルですが)をしています。
結論から言えば、現在の富士山は静穏です。東北の巨大地震以降、多少活動が活発化した時期もありましたが、今はそれ以前とほぼ同様に落ち着いた状況になっています。
これは富士山の懐に住む者としての「実感」ですので、多少は信用していただいていいものと思います。想像ではなくて実体験と言えますから。
あまりはっきり言うといろいろなところからクレームがつくのですが、あえて私の「実感」を書くなら、東北地方太平洋沖地震によって東海地震と富士山噴火の時期は先延ばしになったと思っています。
しかし、一方でその巨大地震がそうであったように、専門家にとっても想定外のことが起きるのが自然現象ですから、少なくとも自然の動きを実感するセンスというモノはしっかり鍛えておきたいと思っています。
さてさて、そんなセンスを磨くために読んだとも言えるのがこの「富士山大噴火」です。必要以上の憂慮、すなわち杞憂は必要ないけれども、人間は安心してしまうと危機予感能力が低下するのも事実ですから、たまにはいろいろなメディアの「煽り」も受け止めておくことも悪くありません。
柘植さんのこの作品、ある意味リアルです。つまり、いろいろな生活をしているいろいろ人に一つの災害が降りかかり、それぞれいろいろな危機が訪れるという事実を、小説という形式の中で巧みに描いているからです。
当然文章というメディアの制約上、同時多発的なシーンを紙の上に同時に表現することはできないわけですが、それらを受け取った私たちが脳内で「同時」に編集し直すことはできますね。
読んでいてそれが結構うまく行ったので、私としては楽しかった(不謹慎ですが)。いろいろなシミュレーションをすることができました。
私の住む村周辺の別荘地の話も出てきますし、職場のある富士吉田市の話も出てきます。まさに「実感」とフィクションが結びつき、そこにある種のリアルさが生まれていました。
柘植さんは軍事に詳しいので、自衛隊の動きも描かれているのが面白かった。
それにしても、世の中の「富士山噴火」の予測、予言を見ますとですね、富士山東麓に噴火口ができることになっているものが圧倒的に多い。そして首都圏に火山灰が降ってパニックになるというパターン。
たしかに直近の噴火が宝永でしたから、その記憶からそうなるのも致し方ないというのは分かりますが、どうなんでしょうね。今までの富士山の噴火の歴史をちょっと見れば、似たような噴火が二度続いた例はあまりないんですよね。
3.15以来、相変わらず南西斜面直下の地震と、山頂北側直下で低周波地震が多発していること、その他のデータを見るとですね、私としては南西麓から大量の溶岩を流出するタイプの大規模噴火が発生するか、北面から火砕流を伴うタイプの中規模噴火が起きる可能性が高いと思うのですが。
もちろんこれは素人のワタクシの「直感」にすぎません。
今後も私は自らと家族、そして地元の人たちの命を守るために、専門家とはまた違った視点で富士山を観察していく、いや、富士山と対話をしていきたいと思っています。
皆さんも、ぜひそれぞれの土地の自然と対話して、危機予感能力を鍛えてみてください。
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