のど自慢本選(の真実)
さあ、いよいよNHKのど自慢@富士吉田市ふじさんホール本番。
私も娘たち、東京から駆けつけてくれた親戚たちと一緒に会場でカミさんの応援をしました。
カミさんは岩崎宏美さんの「思秋期」を歌い、おかげさまでキンコンカンコン合格をいただきました。
それはさておき、一つの番組としてなかなか良い出来だったと感じました。のど自慢もなにしろ素人主人公の生放送、毎回うまく行くわけではありません。
今回は富士山の世界文化遺産登録のこともあり、またゲストも北島三郎、天童よしみという超大物お二人ということもあって、非常に盛り上がったと思います。
いや、それ以上にお見事だったのは、昨日の予選における人選の見事さですね。今日になって本当にその意味がよく分かりました。
というのは、歌のうまさということだけで言えば、もっともっとお上手な方がたくさんいらっしゃったわけです。あるいはキャラの濃い方々も(笑)。
しかし、この番組の成功はたしかにこの20人でなければありえなかった。
それを痛感したのは、出場させていただいたカミさんです。
この20人が選ばれた昨日の夕方5時から、全てが終了した今日の午後2時までの時間、実質的には20人とスタッフが一緒にいたのは9時間くらいでしょうかね、その時間の中で実は感動的なことが起きていたのです。
そして、あの本番の「場」ができあがっている。それは出場した人にしか分からないことです。
ウチのカミさんは「人間力道場」にそっくりだったと言っていました。人間力道場というのは、メキキの会(私と安倍昭恵さんの出会いはこの会のおかげです)が主催する「志の稽古」の場です。
以前は「個の花道場」と呼ばれていたものです。私も一昨年の夏に参加して非常に貴重な経験をしました(その時の記事はこちらとこちらです)。
二日というのがポイントですね。たまたま集まった見も知らぬ者どうしが、二日間で「場」を作り上げていく。人間力道場は実質20時間ですが、こちらは9時間ですから、もっとすごいかもしれない。それでも、やはり一日ではなく、一度家に帰る(自分の日常の場に帰る)というところが重要です。
予選の夜はお互いにほとんどコミュニケーションはありません。音合せもインタビューも個々で行われます。これは正解ですね。もう250人の中から選ばれただけで、それぞれ舞い上がっていますから。
そして一晩喜びを噛み締め、やや冷静になって、そして本番当日を迎える。スタッフは夜中までそれぞれの出場者のキャラや人生を研究し、どう活かすかを準備する。
当日の朝は7時45分集合です。そして、ここからが実はドラマなのです。道場なのです。
具体的に言うと、本番の前の午前中、リハーサルに入る前に、お互いの思い、志、人生をシェアする場面が設けられるそうです。なぜ、のど自慢に応募したのか、どういう気持ちで歌いたいのか。
それぞれそれらを語ると、もう本当に涙なしではいられないほど深い「人生」が見えてきます。歌は人生そのものです。それらを共有することによって、初めて出場者どうしはライバルから仲間に変わっていきます。
もちろん、その過程には共感だけでなく衝突や苦悩もあります。いきなり自分を解放できない人もいます。それをお互いが親身になって支えあうことによって実現していくわけです。これは完全に人間力道場の世界と一緒ですね。
もちろんこうした過程は、NHKのスタッフの皆さんにとっては、番組を成功させる、そして何十年も番組を継続するための伝統的なテクノロジーでもあるわけです。時に優しく、時に厳しく、出場者の潜在能力を引き出していく。道場の後見人たちのように。それは実に見事だったそうです。
出場者にとっては、まさに一期一会。舞台リハの頃には、もうみんなそれぞれを応援するようになっている。そして、本番を迎えるわけですね。
本番前に、このような人生が凝縮された時間を演出することによって、生放送の中に奇跡的なドラマが現出するわけです。
ですから当の本人たちは、もう鐘がいくつ鳴ったとか、誰がチャンピオンかなんていうことはどうでもよくなっている。
単なるコンペティションではないからこそ、こうして愛され続けているわけですね。
私にとっては、そういう裏側を知れたことが何より感動的でしたし、教育者として勉強になりました。
番組が終わったあと、さっそく出場者全員が「同窓会やろう!」という感じで盛り上がり、連絡先を交換しあったそうです。何かを共に成し遂げた充実感と一体感…よく分かりますね。
それも本当にたまたま出会った赤の他人どうしによって二日間で成し遂げられた。こういう体験が現代の世の中には足りなくなっているのでしょうね。そんなことも思いました。
ちょっと音楽的な話もしておきましょうか。バンドさんのすごさについては昨日書いたとおりです。そして、ゲストのお二人…これはもう感動的でしたね。素人さんと一緒に歌うからこそ分かるプロの技術のすさまじさ…感服です。
特にですね、ウチに帰ってテレビの録画を観て聴いて感じたのですが、会場で残響(エコー)がある状態で聞いているよりですね、放送の方がずっとシビアに聞こえるんですね。ですから素人の方々は本番の生音の方がずっと上手に聞こえた。
しかし、プロのお二人はテレビでも完璧。マイクワークなどもあると思いますが、やはり音程、アーティキュレーション、ディナーミク、そしていつも言う「大きなスパンでのリズム感」の素人さんとの違いは歴然でした。もちろん「言葉」の表現も。
とにかく、出場者の皆さん、スタッフの皆さん、応援してくださった皆さん、その他関わってくださった皆さん、本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。
最後に…カミさん、市民会館の舞台で歌うということで、このステージに格別の思い入れのあったフジファブリックの志村正彦くんからもらったギターピックをお守りに持って行きました。
今日は折しも「志村正彦を謳う会」が開催されました。こうして「歌」を通して彼の遺志が受け継がれ、そして広がっていくことにも、心から感動し感謝の気持ちが湧いてきます。
富士吉田が「歌」の街になっていくことを願います。
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コメント
こんにちは、お邪魔致します。先日某所でお会いしました「SP萌え」女でございます(苦笑)まさかあんなところであの人混みでお会いするとは思いもよりませんでした。またお話しできる機会を楽しみにしております。
さて、のど自慢拝見致しました。見事この日一発目の合格でしたね!奥様なら絶対合格間違いなし、と思ってはいましたが、鐘が鳴った瞬間はTVの前で大拍手でした。
投稿: A.I | 2013.07.16 11:45
ご無沙汰しております。
私も『のど自慢』、拝見致しました。
奥様、本当にお上手ですね!
会場全体の温かい雰囲気がテレビの画面からも伝わってきて、見ている私もほのぼのとした気分になりました。
「歌の町、富士吉田」。素敵です!!
投稿: 松原恵子 | 2013.07.17 10:44