『226』 五社英雄監督作品
昭和の男たちは濃いなあ…と昨日書きました。
今日観たこの映画はまさに「昭和の男」への挽歌でした。
描かれているのは「二・二六事件」。公開されたのは平成元年。
この映画を見終えて思ったこと。やっぱり昭和というのは長かったなあということ。64年という年月だけでなく、その激動の密度が異様に高いということです。
なんとなくですが、平成に入ってからの日本は間延びしているような気がします。昭和の反動でしょうか。いや、これが普通なのかもしれませんね。
描かれている「二・二六事件」の男たちは、昭和のはじめの男たち。それを演じている松竹のオールスターたちは、昭和の終わりの男たち。
その両端の男たちが不思議なアンサンブル感を醸し出しています。そこがまずこの映画の大きな価値ではないでしょうか。
この映画にはアンチがいてもおかしくないと思います。その原因が、両端のコントラストにあることはよく分かります。
しかし、昭和の終わりの男たちに近い私としては、役者を通じて向こうの端に近づくことができたというのも事実。
もともと「二・二六事件」というのは評価が定まっていない。いや、定められない。私自身もいろいろ本を読んだり人と話たりして、この事件が日本の男の歴史の中でどんな意味を持つのか、それなりに考えて来ましたが、なかなか結論に至りません。
まあ、三島由紀夫でさえ迷って迷って、そして血迷ってしまったわけであって、これは日本人にとっての終わりなき宿題なのでありましょう。
この映画が、昭和の総決算として製作されたというのは象徴的です。昭和も終わり、男も終わり、映画も終わり、日本も終わり…そんなことは言いたくありませんが、現状を見るに、残念ながらそう言わざるを得ない部分もありますよね。
そして我々は「日本を、取り戻す」ことができるのか。そういう戦いの時を迎えました。
「226」の男たちも「日本を、取り戻す」を掲げて決起したのに違いありません。しかし、結果は…。
考え方によっては、非常に稚拙なクーデター未遂事件であったとも言えます。一方で、純真無垢な大和魂が、カネという悪神(ユダヤ資本にせよコミンテルンにせよ)に負けた大事件とも言えます。また、天皇が人間として国民をストレートに断じた大事件とも言えます。
いろいろな側面があることは分かりますが、その顛末だけ見ると、竜頭蛇尾というか、気合が入っていただけに最後は余計恥ずかしい結果となったというか、それだけは事実です。
それを映画というドラマにするのは、とても大変だったと思います。だから、この映画では、女(妻)をクローズアップしているわけですね。それは苦肉の策であったのでしょうけれども、結果としては、男の情けなさと女の強さを表現するという、いわば「昭和のカラクリ」を暴露することになっていて面白かった。
さあ、プロレスがそうであったように、そのカラクリがばらされてから、我々はそれとどう付き合うのか。そこに楽しみがあると言えるかもしれませんね。
全編観られますから、皆さんもじっくりご覧になってみてください。昭和11年、2月26日からの4日間。どういうことがあったのかは、この映画でほとんど分かります。
そして、その4日間の意味はそれぞれが考えましょうか。
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