ジブリの憲法論
いろいろ重なりとっても忙しいので、人様のふんどしで勝負です。
おととい話題にした「宮崎駿の思想」を裏付ける資料がこれから1ヶ月ほど閲覧できるようなので紹介しておきます。
8月20日までこちらでダウンロードできます。
読めるのは「熱風7月号」の特集「憲法改正」の全文。
憲法を変えるなどもってのほか(宮崎駿)
9条 世界に伝えよう(鈴木敏夫)
戦争は怖い(中川李枝子)
60年の平和の大きさ(高畑勲)
当然、明日に控えた「風立ちぬ」の公開に合わせて…ではなく、あさってに控えている参議院選挙に合わせてのプロパガンダでしょう。
おととい書いたように、私は彼ら(宮崎駿、鈴木敏夫、中川李枝子、高畑勲)の思想は好きでも嫌いでもありません。
ただ、私の基本的な姿勢とはかなり違うというのはたしかです。
この前も散々書いたように、結局は彼はいまだに子どもなのですね。それはそれで結構です。そういう大人がいて、子どもにいつまでも子どもであることを勧めるというのは、それなりに意味のあることでしょう(特に人類の進化史において)。
ただ、それこそ進化しきっていない私たち普通の人類からすると、やはり「熱風」の文章は実にこそばゆい。熱いというより暑い。
ある意味、現実的には非常に危険であるとも言えましょう。理想は理想であると認めつつ、しかし、やはり大人は、その理想を実現するためにも、今は現実的な言動に努めるべきでしょう。
いや、作品としてはいいのですよ。私はこういう理想を持っているから、作品にこう表現する、というのはいいのです。しかし、こうして作品ではなく単なる論として、ここまで直接的に表現されると、う〜ん、どうしても違和感を抱かざるをえません。
私、今から35年ほど前の、中二のある日のことを思い出してしまいました。
担任のS先生が、クラスのみんなに語りかけたんですよね。「みんな、憲法9条って知ってるか?戦争を放棄してるんだけど、それについてどう思う?」
その時、私は勇んで挙手し、まさに高畑勲さんと同じことを堂々と語ったんですよ。自身満々でね。
そうしたら、Bという仲の良い友人が、私に冷静に反論してきた。「軍隊がないことによって外国になめられると、経済の面でもマイナスになる」
私は、その時初めてそういう考え方もあるのだなあと感心したのでした。ある意味目からウロコだった。私の理想論、私の子ども時代の終焉の瞬間です。
本当にその瞬間のことをよく覚えています。皆さんには、なんだそんなこと、という話かもしれませんが、私にとっては一つの転換点になった静かな衝撃でした。
S先生が、そうした議論をどのようにまとめたのか、全く覚えていませんが、たしか彼は広島の出身だったと記憶していますから、きっと日教組の影響下にある人物だったのでしょうね、どちらかというと私寄りの結論を出したような気がします。
宮崎さんたちのような芸術家はまあいいのです。しかし、教師となった今となると、S先生こそがBのような話をすべきだったのではと思います。中二ですから。そろそろいいと思います。
高校の先生方は、どちらかというと反日教組の方が多かったのか、けっこう右寄りな話をする方が多かったように思います(実際にはあまり先生の話は聞いていませんでしたが)。
私は今、中学生に話をする機会が多いので、ちょうど中間的な話、つまり、理想と現実の両方というか、先ほど書いた、理想を実現するための現実を語ることが多い。
それはやはり、友人Bの言葉が中二の私にとって、非常に大きな意味を持っていたからでしょう。
そんなわけで、やはり「熱風」の憲法改正論を読むと、ジブリの作品は子ども向けだなと思ってしまうのですよ。
まあ、考えてみれば、「もののけ姫」なんか、我が山梨の誇る、また私の大好きな網野善彦の影響があるわけでしょう。そして、網野善彦は、こちらに書いたように、思いっきり左翼だった人です。ほとんど工作員。
明日公開の「風立ちぬ」も、結局そういう方向性なのでしょうか。私も子どもになったつもりで観てみようかと思います。子どもが老人のエロスを観るのは、それはそれでどうかと思いますけどね(笑)。
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