『北斎の冨嶽三十六景』 (山梨県立博物館)
いよいよ世界文化遺産に登録が決まりそうですね。私はあまり積極的に賛成してきませんでしたが、もうこうなったらプラスに考えようと思います。
実際すでに外国人の姿がずいぶん増えたような気がしますね。今年の夏は大変なことになりそうです。
さて、その世界遺産登録にちなんでということもありましょうか、ちょうどいいタイミングで「北斎の冨嶽三十六景」展が開かれているので行って来ました。
いちおう名目としては山梨国民文化祭の関連事業なんですね。今回の国文祭は「富士の国やまなし」と銘打っています。ちょっと珍しい。
全国的にも富士山は静岡県(駿河の国)のものですし、山梨県(甲斐の国)内でも甲府盆地の人たちは、それほど富士山に執着していませんから。ま、これも世界遺産登録を見越してのことなのでしょう。
さて、北斎の「冨嶽三十六景」46点が一挙公開されているこの展覧会、さすがにたくさんの人で賑わっていましたね。あらためて富士山人気はすごいなと思いました。
私としてはもうこれが何回目かの三十六景ですので、格別な感動というのはありませんでした。しかし、新発見はいくつかありましたね。
私の、ある意味特種な浮世絵鑑賞法については、以前、同じ山梨県立博物館で開かれた「北斎と広重 ふたりの冨嶽三十六景」の記事をご覧ください。今回もそういう見方をしました。
今回は北斎だけでしたから、北斎の作品の中で片目で見比べたわけです。そうしたら、脳ミソが混乱しなかった作品が二つだけありました。
それはすなわち、「五百らかん寺さざゐどう」と「駿州江尻」ですね。
「五百らかん寺さざゐどう」は実は完璧ではありません。画面右上屋根と左下欄干の描写が矛盾しています。しかし、全体としては北斎らしくなく(?)、比較的正確な遠近法で描かれています。ま、画面周辺はレンズの収差ということで納得しましょう(笑)。
「駿州江尻」は、これは名作ですねえ。空間の奥行きだけでなく、時間の奥行きを感じる。静止画でありながら、一連の動画を観るような感覚があります。
おそらく観る人は、旅人の手を離れた懐紙を順に見ていくのでしょうね。そうすると、実は時系列的には逆になるわけですが、しかし、一枚の懐紙(あるいは一群の懐紙たち)の運動として捉えると正しい時系になる。面白いですね。
そんな動画的な効果、あるいは観る側のズームイン、ズームアウト効果は、正しい遠近法あってのものかもしれませんね。
さて、博物館を出て若彦トンネルを越えて河口湖に戻って来ましたら、まあ実に美しいリアル富士山が目の前に現れました。うわぁ、やっぱり本物にはかなわないなあ。
というか、なんだか、これの方が北斎の作品よりも「嘘っぽい」かもしれない。できすぎだ。思わず写真を撮ってしまいました。
どうですか?富士も雲も月も木も雪も全て「絵には描けない」嘘くささですよね。北斎が100歳まで生きていたら、こういう絵も描けたのかもしれません。
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コメント
蘊恥庵庵主様
東海道五十三次 と 冨嶽三十六景 が好きなんです
昔 永○園のおまけでカードを集めたらセットをもらえるというのを一生懸命集めてもらっていました(笑)
大人になり はがき大のものを買うことができました^^
『駿州江尻』はNHKの名画フレームの解説で面白く見ました。
富士山は美しすぎて本当に嘘のようですね。
ただ、富士山も暑くて湯気を出してるようで生きてるんだ~と感じました^^
投稿: なかた | 2013.06.17 11:24