『ライフ・オブ・パイ』 アン・リー監督作品
これは面白かった。映画マニアの下の娘が借りてきたんですが、最後は娘そっちのけで夫婦が観賞用ソファを占領。続けて二度観てしまいました。
宗教が生まれる瞬間、あるいは神話、物語が生まれる瞬間を初めて体感できたような気がします。
「トラと漂流した227日」というサブタイトルからは、単なるサバイバル・アドベンチャーもののように予想されますし、ある意味最後の最後まで、私たちはそういう気持ちで(すなわちなんとなく釈然とせず)観てしまうかもしれません。しかし…。
アン・リーの意図はそこにあったのでしょう。私たちの日常的、現代的な物語観をたっぷり発動させておいて、実はもっと根源的なテーマを持っていたことを発見させ、そしてもう一度最初から観ようという気にさせる。
たしかに最新の映像技術によって、最古の人間の文化が表現される面白さもありますね。まあ、逆に言えば、私たちの脳ミソの想像力はずいぶんと衰えたということでしょうけど。
トラの名前から当然想起されるあのリチャード・パーカーにまつわるシンクロニシティのことは、これははっきり言ってこの映画にとってはどうでもいいことですね。逆に知らない方がいいかもしれない。
それよりも冒頭から散りばめられている宗教的な伏線や比喩を探しながら、何度も観るのが正解でしょう。
ヒンズー、キリスト、イスラム、仏教…そこまでは、皆さんも比喩を読み取ることが可能でしょう。深読み過ぎるとか自己流過ぎると言われそうですが、私はその先に「神道」を見てしまいましたね。やっぱり宗教以前の「神道」こそ、世界宗教のルーツであると思いました。
単なるアニミズムではありません。災害と恩恵の両方をもらたす自然に対する信仰ということであれば、「荒魂」と「和魂」で説明できますが、この映画には「奇魂」と「幸魂」も描かれていました。
そして、その四魂を統括する「直霊」も見事に表現されていると感じました。これってまさに「神道」じゃないですか。
そして、その一霊四魂が、最終的には「自己」の中に見出される…ヒンズー、キリスト、イスラム、仏教ではとてもくくりきれません。
いやあ、ホント面白かった。子どもたちはよく分からなかったみたいですが、私たち夫婦にとっては非常に示唆に富む映画でした。
極限状況が宗教や神話を生む。私たち現代人はそうした極限状況を排除する形で進化を遂げてきましたから、当然宗教や神話は弱体化しますよね。
DVD買おうかな。いや、やっぱり映画館で3Dで観てみたいかも。
宗教(特に神道)に興味のある方には、絶対におススメです。
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