『本質を見抜く「考え方」』 中西輝政 (サンマーク文庫)
久しぶりに「ためになる」本でした。
タイミングとしては、期せずしてここ数日の話の続きになるとも言えます。
今日、カミさんはコモンズ学会のフィールドトリップで、世界各国の研究者たちと都留市を回りました。非常に興味深い気づきに満ちた小旅行となったようです。
やはり、私たち日本人が無意識の下で何百年、あるいは何千年も自然にやってきたことが、外国の方にはたいへん不思議なものに感じられるらしい。まさに「コト」より「モノ」という日本文化の真髄ですね。
こうした「異文化交流」はお互いにとって素晴らしい気づきの場となります。私も行きたかったなあ。
さて、しかし、ではこういう日本的な「モノ」、たとえば「法」という「コト」を超える「慣習」という「モノ」をですね、世界中に移写拡大できるかというと、これは実際はとても難しいでしょう。
世界各国の研究者が、もし日本のこういうシステム、いやシステムにもなっていないけれども、それよりも上位なメタシステムとでも言うような「モノ」が確かに存在しているという事実や歴史に感動して、それを母国に持ち帰ったとしても、なかなかそれを彼の地で実現するのは現状ではほとんど不可能でしょうね。
私の悩みはそこにあります…壮大な悩みですね(笑)。
そこで、もう少し現実的に、今の人類のレベルでまず何をすれば良いか考える時、この本は非常に役に立ちます。ためになります。
現実の国際社会でバリバリにやってこられた中西さんの、相当に濃厚な53もの「テクニック」や「ストラテジー」を、私たちはたった数百円でおすそ分けいただけるのですから、これは読まない手はありません。
国際社会というと、一般的な庶民からすると、それこそレベルの高い、あるいは遠い世界の話のような気がしますが、全然そんなことはありません。
私は実は、現在の国際関係までは、個人と個人の関係を敷衍してとらえることとしています。所詮人と人の「感情」で動いている世界だと、あえて高をくくっているのです。汚い言葉で言えば、私利私欲のぶつかり合い、騙し合いが基本。
ですから、逆に言えば、国際関係を見る思考技術や戦略は、我々庶民の生活上のそれらに成り得るということですね。
そういう感覚で読むと実に役立つし、もちろん国際問題をとらえる時にも有用でありますから、私はおススメしたいのです。
以前紹介した中西さんの「情報を読む技術」よりも読んでいて楽しかった(賢くなった気がした)かも。
全体的に何章かにわたって語らる、「数字、論理、美しい言葉、見事すぎる議論、全員一致」よりも「宙ぶらりん、直感、ふと浮かんだ疑問、肌身感覚」を大事にせよという論は、私の繰り返す「コトよりモノ」という考えに一致しています。
結局、国際問題を考えるにしても、私たちは日本人ならではの「モノガタリ」を大切にしなければならないし、それこそが国際社会における日本の役割なのかもしれませんね。
Amazon 本質を見抜く「考え方」
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