『日本の文脈』 内田樹・中沢新一 (角川書店)
昨日の「コモンズ」「入会地」の話の続きになるでしょうか。
まあ、この二人の対談は楽しいでしょうね。今までそれが実現していなかったというのが不思議です。
私にとっては、お二人ともに間接的に出口王仁三郎の影響を受けているところに興味もあり、また共感するところもあるわけです。
お二人ともに「物語」を重視している、すなわち私の言う「モノ」の存在を近代科学や近代哲学を上位に置いている。そこはワタクシと同じ。
この本の楽しさというのはまさにそこにあります。たとえば内田さんが合気道を通じて出会った「自分の内側の未知なるもの」。これはよく分かります。
今日はある木工作家さんとお話する機会があったのですが、その方のお仕事的に言うなら、座った瞬間に「自分の内側の未知なるもの」と出会う、そういう椅子をお作りになりたいと。その方はそれを見事に「禅」につなげていらっしゃいます。これもよく分かります。
そういう西洋的な「コト」の世界では表現し得ない「モノ」の世界を、私も好む…と言うか、間違いなくその世界に生きているのが私なのであります。
おっと、私の話はいいとしてですね、とにかくそういう「モノガタリ」が得意な人の代表がこのお二人とも言えるわけです。
そういう意味では、二人はあまり現実的な政治や経済や歴史問題などに口を出さないほうがよい。おとといの内田樹さんのブログのエントリーは、そういう危険性(ある意味では面白み?)を露呈した内容でした。
それこそ危うい面白さがあるのでぜひこちらをお読みください。
この文章は「文学」であって、杓子定規に言葉を解釈するとツッコミどころや間違いだらけです。実際そこにツッコミまくる空気の読めないネット言論人たちが多くてウンザリします(こちらですとそういうコメントをたくさん読めます)。
ま、これを歴史研究者協議会の面々の前で堂々と語る内田先生もすごいですけどね(笑)。
さてさて、この本には興味深い箇所がたくさんあったのですが、「共生」に関して、もっともなことが書いてあったのでちょっと引用します。昨日の「コモンズ」「入会地」などの基礎的な部分につながると思いますので。
内田さん、中沢さん、そして釈徹宗さんの対談の一部「共同体の維持に必要なもの」から。
(内田)「共生」って軽々に言いますけど、共生するの、たいへんですよ。だって、隣人が自分にとってまったく理解できない人間であっても、不快な人物であっても、それに耐えるということが共生なんですから。その苦痛に耐えるためには、不快をはるかに超えるような「大きな物語」が必要なんです。物語がなければ、日常的な不快に僕たちは耐えられるはずがない。かつては地縁であったり血縁であったり、共同体を結びつける物語がいつくかあったんですけど、いまはもうそれがない。自分が理解も共感もできない人間を隣人として受け入れて生きていくためには、「これは世代を超えて継続していかなければならない活動なんだ」という歴史を貫くような大ぶりの物語がないと無理です…
私も共同体維持に物語が必要だというのには大賛成です。では、その物語は具体的にどういうふうに紡いでいけばいいのか。ここに関しては内田先生はちょっとあきらめ気味?(笑)
私はそれを政治や経済、特に政治の世界でも実現できると考えている中二病患者です。だいいち、共同体を結びつける物語が今はもうない…なんて言いたくない。実際ありますよ。それを示せるのが昨日紹介した国際コモンズ学会北富士大会だと思っているのですが。
中二病でホント嘲笑されてしかるべきなんですけど、私はその物語の真のグローバル化も可能だと信じています。そして、今ここがポイントだと思っているわけです。
「物語」が「物語」で終るのか、それとも「歴史」になるのか。
歴史は未来からやってくるのですから、なんと言われようと、未来に向かって物語し続けるべきなのです。過去を今に向けて物語っているだけではダメということです。今を未来に向けて、そして未来を今に向けて、さらに過去を未来に向けて物語ること重要性に気づくべきなのです。
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