「長州力 vs ジャンボ鶴田」に見る和魂
今日はジャンボ鶴田の命日。あれから13年ですか。
我が山梨県の誇るモノノケ。まさに怪物。しかし、なぜか「優しさ」を感じさせるという、いかにも日本昔ばなし的な存在でもありました。
最近の話題に関連させて言うなら、「99%の和魂(にぎみたま)と1%の荒魂(あらみたま)」ということになるでしょうか。
プロレスは本来、荒魂のぶつかり合いが主となって、そこに結果として和魂が浮き上がってくるという性質のものです。
そんな中、鶴田さんは異質と言えば異質でしたね。先日プロレス同人誌の発行者の方と話した時も、「鶴田にはある意味裏切られ続けた」という話が出ました。
もちろんそれは逆説的に「期待」や「夢」を抱かされ続けたとも言えます。いつか本気の鶴田を見られる、いつか鶴田の怒りを見られると。
たしかに時々彼は本気を出しました。出させられました。恐い鶴田を誰が引き出すか、それも一つの楽しみでした。
いつもは静かで穏やかで美しい富士山が、時として恐ろしい噴火を起こすのと同じです。富士山はそういう本質を内包して平和なのです。単純な平坦な静けさではなく、何かが鎮められた静けさ。
昨日の話で言えば、天皇もそうでしょう。天皇の怒りは想像できないかもしれないけれども、しかし間違いなく可能性としてはあるという実感がある。
人間というのは、そういうモノの発動を待望するような不思議な一面も持っているんですね。変な話、私は富士山の噴火というのを体験してみたいとも思っている。富士山本気出して驕り高ぶった人間どもをビビらせてくれとも思っている(不謹慎でしょうか)。
そういうモノを封じ込めて、私たちの日常があるわけです。そしてそこには祈りがある。実は日常が危ういモノであることを予感しているからこそ祈るのです。そして、どこかで祈りの限界も知っている。その微妙なバランスに信頼して生きていくしかないのです。
話がだいぶ飛びましたが、今日はそんなジャンボ鶴田の「和魂」の名勝負、対長州力戦を皆さんにもご覧いただきたいと思います。
私はこちらに書いたように、完全版ビデオを入手して時々観ているのですが、最近YouTubeでも観戦できるようになったので、皆さんもぜひ。
ここに表現されているのは、間違いなく鶴田の和魂です。荒魂の発現の期待は、ある意味大きく裏切られましたが、しかし、結果として彼の内包する荒魂は永遠に語られることになりました。
隠すことによって永遠化する。ここ数日の「国譲り」の理論ですね。もちろん対戦相手の長州力が一番その隠されたモノを体感したでしょうし、観戦する私たち、あるいは他のレスラーたちもしっかり受け取って継承していくことになったでしょう。
長州力 vs ジャンボ鶴田 その1
長州力 vs ジャンボ鶴田 その2
長州力 vs ジャンボ鶴田 その3
長州力 vs ジャンボ鶴田 その4
何回か、この映像を世界的な格闘家の方々と観ましたが、皆さん「すごい…」とおっしゃるのみです。実戦を知っている人たちからすると、このレベルで60分間戦い続けることだけでも、もう怪物、モノノケだということでしょうね。
そして、やはり鶴田の勝ちであると。全体を通じて長州が呑まれていると。なるほど。最後鶴田のボストンクラブで終わっているのも象徴的ですね。
先日引退した小橋建太選手とはまた違った「最強」「絶対王者」ぶりを見せてくれた鶴田さん。彼の和魂と、昇華された荒魂は永遠に語り継がれますね。本当にすごいレスラーでした。
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