『日本が世界一「貧しい」国である件について』 谷本真由美 (祥伝社)
これはどうなんでしょうね。なんともいやな読後感。かと言って、ある意味間違ったことが書いてあるのではない。
これはですね、日本を知る本というよりも、欧米を知る本と考えた方がいいでしょう。「日本」を「イギリスやドイツ」に読み替えて、「貧しい」を「豊か」に読み替えれば、立派な欧米礼讃本となります。
まあ、まるで文明開化後のある一派のような、なんともアナクロな比較文明論とも言えますね。
それがけっこう評判で売れているというのは、実際にこういう価値観、視点で日本を改革したいという一派がいるということなのか、それとも、今まで百年以上もずっと語られてきたこういう文明開化論を知らないで、それこそ明治初期みたいなカルチャーショックを受けている一派がいるということなのか、はたまた、それを忘れてしまっている一派がいるのか、どれなんでしょうね。
私は「和魂洋才」派なので(笑)、正直これを読むとイライラすることの方が多かったわけです。たとえば日本の祭や風習(餅を食べることとか)を、ああいうふうに単なる合理主義と実利主義でバカにされると、内なる大和魂がフツフツと沸騰して、思わず「は〜?」と独り言を言ってしまいます。
もしかすると、それこそが著者の目論見であって、私はそれにまんまと乗ってしまっているのかもしれませんけどね(苦笑)。
そう、ここのところのテーマである「荒魂」と「和魂」の話にもつながります。カーッとなることによって、日常に埋没した自分のベースメントを思い出し、かつ大切にするようになるということが実際あるし、必要だったりする。
そういう意味では、先日紹介した『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』と両方を読むとバランスがいいのではないでしょうか。
竹田さんの本では、なるほど〜やっぱり自分っていい子なのねと褒められていい気になって、それで終わりになってしまう可能性もあるわけですよ。
考えてみると、私は一見自分の敵と思われるような人や文物とも好んで交流するようになりました。けっこう最近のことですが。
そこでの衝突や葛藤が愛を深くするということがあるんですよね。それが実体験で分かった。
みんな仲良くというようなきれいごとではなく、どちらかというとプロレス的な発想です。
人によっては、この本をペラッとめくっただけで、あるいはレビューを読んだだけで、「こんなとんでもないもの」と決めつけて、読みもしないで批判、嫌悪する人もいるかもしれません。
私は、できればそういうふうではなく、不快感を味わったとしても、その不快感の種が何なのか、自分のどういう所にどういうように根ざしているのか、どこから来たのか、そういうことを知りたいと思っているのです。
そういう意味では、久々の刺激的な良書であったと思います。
Amazon 日本が世界一「貧しい」国である件について
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