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2013.05.01

富士山…世界文化遺産登録へ

Img_6464 外まで出ましたか。とりあえず富士山に住む者として祝意を表したいと思います。
 富士山(天教山)が世界の文化的中心になるための第一歩になるといいですね。
 私の人生はそのためにあるようなものですから、こうして世界から「文化」として注目されるのは純粋に嬉しく思います。
 もちろん一方でいろいろ不安もありますし、世界遺産自体に疑問も残っています。
 私、3月にも『日本人は、なぜ富士山が好きか』の記事で「私は今年中に世界遺産にならない方がいいと思っています」と書いていますね。
 皆さん、ユネスコに提出された推薦書をご覧になりましたか?
 英語ですし、私も全部をちゃんと把握しているわけではありませんが、ぱっと見ただけでも非常に表面的な内容です。
 私のような富士山マニアからすると、富士山の文化の表面をなでただけの推薦書と言わざるを得ません。
 もろちん、相手が世界ですからしかたない部分もあると思いますが、富士山信仰に関する部分がほとんど「富士講」という近世の半商業的なものに限られているのはいかがなものかと思います。
 第一、その富士講自体が現代日本人にはなんとも縁遠いものになってしまっています。地元民でさえ(私も含めてですが)その本質はよく分かりません。
 そう、富士山に対する地元の無理解というのが一番心配ですね。
 このたび登録にあたっては様々な条件が課せれています。それをクリアーするためにこれから地元にはかなりのストレスがかかると思います。そのあたりの共有もなされてこなかったので心配ですね。
 登山者の問題、車の排気ガスの問題、ゴミ問題、建物などの景観の問題、そして演習場問題…。
 そう、演習場の問題も看過できませんね。世界文化遺産になろうかという国立公園内で、しかも天皇から恩賜された土地で戦争の演習が行われること自体、実は大きな問題です(その歴史を知ると一概に反対できない部分もあるのですが)。
 地元民なら分かるとおり、実際問題として、あの爆発の振動で多くの自然遺産や文化遺産にダメージがあることは科学的な事実です。
 いっそのこと、世界文化遺産登録を機会に、なんとくな棚上げ不問になっていた演習場問題も、より未来志向的に解決が図られてもいいかと思います(実際に具体的な案もあります)。
 富士山は日本の象徴。それはたしかです。ならばもう一方の日本の象徴である天皇とも結びついていいはずですね。
 そういう意味では、たとえば、市丸利之助少将の歌に見られるように、大東亜戦争においては、まさに「国の象徴」、「魂の象徴」であった富士山。
 私はこれを機に市丸少将の歌を読み返してみようかと思っています(最近では自分も歌詠みになりましたし)。
 こんな近過去の「文化」すら知らない私たち日本人が、世界に向けて「富士山は日本の象徴」と叫んでよいものかどうか。
 また、この号外になるような歴史的な事実を、さらに近過去において富士山と対峙した、かの仲小路彰はいかに評価するのか。彼の言葉にも耳を傾けてみたいと思います。

Amazon 市丸利之助歌集

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