出雲大社の遷座祭に思う…「国譲り」とは
今日、出雲大社では本殿遷座祭が執り行われましたね。
しばらく仮住まいされていた大国主神がリビルドされた本宅にお帰りになったということです。
皆さまご存知のとおり、本年平成25年は、出雲大社平成大遷宮と伊勢神宮式年遷宮とが重なる特別な年です。
その二大遷宮のクライマックスの一つが今日行われたわけです。ちなみに伊勢神宮の遷座は10月。
そんな記念すべき日にちなんで、今日は「国譲り」の本質について私論を述べようと思います。
私は日本の歴史において行われた次の5回の国譲りを重要視しています。
第一は日本神話における大国主大神による天津神への国譲り。出雲大社の起源にもなる神話ですね。
この国譲りの本質は「和魂(にぎみたま)」にあります。
日本の神々(すなわち自然とも言えます)には、災厄(災害)をもたらす荒々しい一面と、恩恵(豊穣)をもたらす愛情深い一面とがありますよね。
それをですね、大国主を中心とする原日本文化は国譲りを通して、つまり他者(ここでは天津神)に対して、戦わずして「譲る」という行為をとることによって、自ら(ここでは国津神)の「荒魂」を消し去り「和魂」だけを残すという、ある種の昇華を行ったのです。
その結果、のちに国を護ることになった天津神系(伊勢神宮系)の神々にも、国津神の次元の高い「和魂」が純粋な形で引き継がれたわけです。引き継がれたというか、無意識の底流に残ったというか。
簡単に言えば「譲る」ことによって縄文の神々の魂が浄化されて生き残ったということです。
その象徴が大国主の「和魂」を名乗る大物主神でしょう。大物主は三輪山に祀られ、物部氏の尊崇を受けることとなります。
さて、その物部氏が蘇我氏に滅ぼされた一連の争いが第二の国譲りです。ここでは「戦い」「争い」すなわち「戦争」という、まさに荒々しい手段によって「和魂」の純粋化が図られました。
人(という自然)の心に残る「荒魂」が発動することによって、「荒魂」自身が排除されることなるわけです。
その「国譲り」の本質に気づいたのが、自らも「荒魂」を発動させてしまった厩戸皇子、すなわち聖徳太子です。
太子は苦悩ののちにその本質に気づき、十七条憲法の第一条に「和を以て貴しと為す」を配置したのでした(「和」の精神の源泉…ニギハヤヒ参照)。
第三の国譲りは、これはちょっとローカルな話です。我が地元の富士山北口本宮の冨士浅間神社について。ここでは大国主の息子である建御名方から木花開耶姫に対して国譲りがなされています。細かいことは省略しますが、こちらの記事をお読みいただければある程度お分かりになると思います。
第四の国譲りは明治維新です。これについては今までの流れで説明せずともお分かりになりますよね。明治時代に「和魂洋才」という言葉が使われたのは偶然ではないでしょう。平安時代の「和魂漢才」の頃には、すでに「大和魂」の読み違いは起きていたとは言え、言葉として「和魂」が生き残っていることは、まさに魂の底流に関わる現象であると言えましょう。
そして第五の国譲りは、これはもうここまでくれば皆さんご想像できますでしょう、そう、大東亜戦争の終戦(敗戦)です。
これについてもここでは詳しく述べませんが、最近、憲法改正や教育問題などで、この「国譲り」の本質を理解していない論議が跋扈していて残念に思います(なんて、こんなこと考えているのは今のところ私だけなのですが…苦笑)。
たとえば平和憲法が誰によって作られたかというのが問題ではなく、「和魂」の永遠化のために、我々の「荒魂」が発動したという点に注目しなければなりません。つまり、先の大戦(荒魂)の意味をしっかり捉えなければならないということです。
その時参考になるのが上記第二の国譲りというわけです。
国譲りによってですね、実は「和魂」が「大和魂」に変わっていくのです。そういう神々の(自然の)働きというのは、私たち人間の中にも備わっているはずなのに、私たちはそれをすっかり忘れてしまっています。
第六の国譲りはいつ起きるのか。そして、それはどういう形で起きるのか。私はそれを知っているつもりです。もう実は始まっているのです。一見「荒魂」に見える何かが、驚くべき形で「和魂」を発揮する時が、そぐそこまで来ています。
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