郡内と植田は富士の裾廻し
田植えの季節となりました。我が校でも来週明見で田植えをします。
今日はそんな季節の風景を詠じた川柳を一つ紹介します。誹風柳多留の中にある句。
郡内と植田は富士の裾廻し
郡内とは郡内織物のことです。江戸時代、絹織物と言えば「ぐんない」と言われたほどの人気商品でした。
今でも富士吉田を中心とする郡内地方では織物業が盛ん…というか、なんとか生き残っていますね。フジファブリックの名前のもとになった富士ファブリックさんもそんな会社の一つです。
郡内とは「郡内海気」の略。「海気」とは大陸から伝わってきた絹織物の種類を指す言葉でした。
のち、甲斐の国、特に郡内地方での生産が盛んになって「郡内海気」が評判となり、そのうち「ぐんない」と言えば高級絹布地の代名詞になりました。
郡内の絹織物の技術は、秦の始皇帝が不老不死の薬を求めさせたというあの徐福が伝えたと言われています。もしそれが本当なら、たしかに日本で最も歴史の長い絹織物だと言えそうです。
江戸時代には徐福ブームもありましたから、それで郡内織も評判になったのでしょうね。
川柳というのは大衆性が必要です。ということは、この句が作られた19世紀初めには、全国で「郡内」と言えば「高級布地」というイメージが定着していたということですね。
ちなみに「甲斐絹」という表記は、明治以降の言わば商標です。
植田はたぶん田植えの終わった田んぼを指すものだと思います。苗の並ぶ平坦な造形が、なめらかな郡内織物を思わせたのでしょう。
裾廻しというのはいわゆる「八掛」。写真をご覧いただけば分かるとおり、胴裏が富士山だとすると八掛は裾野のようですよね。
このデザインのアナロジーと、郡内と言えば富士山というイメージとを、実に見事に詠んだ句だと言えます。
植田は今も江戸時代と同じように望むことができますが、郡内はちょっと元気がない。
最近、織物の研究をされている方とお話する機会があったのですが、これからは伝統的な手織りが復活するのではという話をしました。
紡ぐ、撚る、織る、晒す、染めるなどの行為に潜む「神事」が復活するのではないかということです。
ぜひ郡内織物もそういう意味で復活してほしいと願っています。私もなんらかの形でお手伝いできればと思います。
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