『放射線ってなあに?』 (Science Window 科学技術振興機構)
昨日のラドンも放射性物質の一つですね。ウラン→トロン→ラジウム→ラドンです。
山梨県には、トロン温泉、ラジウム温泉、ラドン温泉と全部ありますから、地下にはウランが大量にあるのでしょう。ま、これ一つとっても、単純に放射性物質が体に悪いというのは間違いだと分かりますね。
知識がないまま、全部一緒くたにしてしまうのは恥ずかしい行為です。しかし、かの原発事故以来、なんでもかんでも「放射能は怖い」「原発反対」という考えが、ずいぶんと広がりました(特に主婦とかに)。
そう、だいたいそういう人たちは「放射能」と「放射線」の違いもよく分かっていなかったりする(私も以前はそうでしたが)。
福島など直接的、実際的に被害を受けた方々はもちろ別としてですね、地球誕生以来ずっとずっと付き合ってきた、そしてずいぶんと恩恵にもあずかってきた放射線に対して、急に反旗を翻すその他大勢の人間ってずいぶん身勝手だと感じましたね。
さて、今日はX線による胸部検査がありまして、服を着替えている間に担当の放射線技師さんとお話しました。
原発事故以来、放射線というとなんでも危険というイメージができてしまい何とも仕事がしにくいとのお話でした。
加えて我が山梨県で問題となった、あの甲府の病院の放射性検査薬の過剰投与。あれによっても大きなダメージを受けているようでした。
先日おいでになった物理学者さんも、原発事故後はなんでも原子力というと「反対!」と言われるようになってしまったと嘆かれておりました。
正しい知識がないままに、ただ反対、排除、反省というのは、ある意味では逃避に過ぎません。もちろん、検証がある程度できるまで自重するということは必要でしょうけれども、もう全てを無に帰してしまおうというのは暴力的に感じますね。
そんなことを思っていたら、ちょうどこの本が届きました。以前紹介したサイエンスウィンドウ(Science Window)、つまり科学技術振興機構の編集による子どもに対する啓蒙本です。
タイミングが良かったということもありますね。それに子ども(小中学生)向けということもあって、非常に楽しく勉強させていただきました。
さっきはなんだか偉そうなことを言ってましたが、正直知らないこと満載でした。子ども向けでもこれだけ知らないことばかりなのですから、この世界の深さというか、重要さに比して、やはり教育が不足しているなと感じました。
実際、学校の先生、理科の先生でさえ、ここまでの知識はないでしょうね。
昨日、また仲小路彰のお弟子さんのお宅でいろいろとお話しました。仲小路彰は、東大哲学科の出ですが、なにしろ天才すぎてですね、在学中教授たち(和辻哲郎ら)に、お前には教えることが何もないと言われ、東大に籍を置いたまま物理学校に通っていたそうです。そして、5ヶ月で当時の最先端の物理学(つまり相対性理論)までマスターしてしまった。
彼は原爆の悲劇を乗り越えるのが人類の義務であると考えました。どう乗り越えるかというと、原子力の平和利用です。それも核融合。太陽の原理です。それを戦後すぐに言っている。
原爆にさえ、神の愛を感じなければならないと書いているんです。21世紀は我々の科学技術と魂のレベルを上げて、原子力世紀としなければならないと。ここには明らかに私たち庶民とは違う視点があります。もちろん単なる原発推進派とも違います。
この本で言えば、長崎の赤十字血液センター所長の関根一郎さんの言葉が心に残りました。被爆を経ての放射腺研究。そして、「自分で考える」「証拠」「記録」という科学的姿勢。
放射線は目に見えません。臭いも味もありません。発見されたのは人類の歴史上ではつい最近のことです。それまで「なかった」モノが「認識できる」コトになった。いや、頭では認識できるけれども、その姿が見えないだけに「モノノケ」が登場したとも言えますね。完全にコントロールできていないし、それ以前に知識も不確かだから「コト」ではないな。
そうした「モノノケ」を排除しようとするのは、近代西洋の論理です。日本古来の思想は違ったはずです。
「荒魂」を「和魂」に。
放射線ももちろん「自然」の一部です。自然には「荒」「和」の両面があって当然です。
私たち人間は、そうした自然を征服的に支配下に収めるのではなく、その力を使わせていただく、力の方向、流れを整えていく、すなわち自然の力を「コト向け」ていく必要があるのです。
そのための第一歩が「知る」ということです。自他一体、不二の境地に至るということなのです。
そのまた第一歩として、この本はとても有用でありました。皆さんもぜひお読み下さい…って、公式ページのどこから手に入れればいいのかなあ。
こういういい本はAmazonなどで売ってもらいたいですね。
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