『ストーカー』 アンドレイ・タルコフスキー監督作品
先日のロシアの隕石落下でこの映画を思い出したマニアックな人もけっこういることでしょう。私もその一人でした。
いかにもタルコフスキーらしい、水や火などの象徴的なシーンが延々と続きます。ストーリーやテーマを超越した「感覚」が全体を支配します。それはまさに「モノ」の怖さ…。
隕石落下の跡と思われる「ゾーン」に謎の部屋がある…そこへの案内人が「ストーカー」。
今では「ストーカー」という言葉はあまりに一般化してしまい、ある意味においては、本来の語感が忘れ去られているような気がします。
私がこの映画を観たのはたぶん1990年くらいだと思います。その頃はいわゆる「ストーカー」という言葉は日本語としては使われていなかった。
私はこの映画で初めて「stalk」という英単語を知ったのです。そして、その語感はこの映画によって私の脳内に注入されたと言ってよい。
今思うと、私の「モノ・コト論」における「モノ」の存在感に対する感覚は、この映画によって生まれたのかもしれません。それほど、「なんだか分からないけれどゾッとした」のです。
ロシア、いやソ連の巨匠タルコフスキー1979年の作品。その内容や特徴については、今までも多くの映画マニアや映画制作者、そして他ジャンルの芸術家たちによって語られてきましたから、私がここでどうのこうの言うまでもありません。
好き嫌いや解る解らないははっきり分かれるところですが、しかし、たしかにこの作品は世界の映画史に残る名作であり、皆さんにも一度は観ていただきたい作品です。
今はありがたい時代で、YouTubeで全編観ることができます。
この作品が発表されたのちに、あのチェルノブイリの事故があり、私たちはこの映画の予言性に再び「ゾッ」としました。
しかし、あの時は、まさか同じような「ゾーン」が、私たちの国日本にも生まれるなどとは想像すらしなかったのです。
そして、今回のロシアへの隕石落下…タルコフスキーが単なる表現者ではなく、霊的なメッセンジャーであったのではないかと思わずにはいられません(というか、ホンモノの表現者、芸術家とは少なからずそういう性質を持っているものですね)。
タルコフスキーは日本とも縁の深かった映画監督です。ある意味ではご多分にもれずとも言えますけれども、彼は黒澤明や溝口健二にかなり入れ込んでいました。たしかにこのストーカーにも溝口の影響が見て取れますね。
最後に、タルコフスキーマニアとして有名でもあった、日本の誇る霊的表現者であった武満徹が、タルコフスキーを追悼して作った曲を聴いていただきましょう。「ノスタルジア―アンドレイ・タルコフスキーの追憶に― ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための」です。
今はもうタルコフスキーも武満もこの世にいません。彼らは今の世界をどのように眺めているでしょうか。
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