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2013.02.21

『大東亜戦争後の世界–仲小路彰の「地球論」思想–』 野島芳明 (展転社)

Url 日の『昭和の天才・仲小路彰』の続編です。
 著者の野島芳明さんは、直接仲小路彰の教えを受けた数少ない弟子の一人ですが、近年お亡くなりになってしまいました。
 野島さんの遺されたこの2冊は、21世紀に仲小路を復活させるための重要なきっかけになりうる本です。
 膨大な仲小路の著作は、今西尾幹二さんを中心に続々と復刊されていますが、我々凡人にはなかなかその全貌をつかむのは困難です。フル回転した天才の一生を怠惰な凡夫がなぞるなどもちろん不可能ですよね。
 そのエッセンスを野島さんは上手にまとめてくれています。ここを入り口に深く広い知の樹海へ足を踏み入れるのが、私たちにはいいかもしれません。
 とは言え、昨日お聞きしたお話によると、とにかく仲小路彰は分かりやすく話をしてくれる方だったようです。どんな階級、職業の方に対しても、それぞれに合った語り口で話してくださったとのこと。なんでも、地元山中湖の百姓の夫婦喧嘩にまで相談に乗ってくれたとか。
 まさに釈迦の対機説法ですね。本当に頭の良い人は「難しいことを優しく(易しく)語る」ことができるものです。
 そんな仲小路彰の戦後の大事業「地球論」を支えた独特の世界史観や日本文化観が、わかりやすく解説されているのがこの本です。
 第三章の「マルクス主義とソ連・中国」で語られているように、仲小路彰は唯物史観を諌めました。彼の哲学は、まあ当時のご多分にもれず、マルクスやヘーゲルから始まっているのですが、最終的には完全にそれらを凌駕した高次元にまで達しました。
 彼のロシア革命研究では、「ロシア革命は今世紀に終わる」と「予言」されています。たしかにソ連は20世紀末には崩壊しました。昨日うかがった話では、さらにアメリカの没落も予言されているとのこと。そして、日本は…。
 また、興味深いのは彼の「聖人伝」シリーズです。釈迦、孔子、ソクラテス、マホメット、キリスト、聖徳太子について、一般的な理解を完全に超えた解釈をしています。とは言っても、昨日聖徳太子伝たる「夢殿の幻」をざっと読ませていただいただけですが。
 これはぜひ全巻読んでみたいですね。おそらくはその「聖人」たちにかなり近いレベルであったと思われる仲小路さんがどう解釈し評価しているのか。
 それらも含めて著作の全貌はつかみきれていない…実際にGHQによって没収、焚書処分にされたものや、自身が焼いてしまったもの、また現在でも未整理のものなどがたくさんある…のですが、現段階での著作目録がこの本の巻末に収載されていますので、そのタイトルを遠望するだけでも、この昭和の大天才のスケールの大きさが分かります。
 また、自分はどこから足を踏み入れようか考えるのもまた面白いでしょう。出口王仁三郎の業績も同様に全貌が明らかになっていませんね。そちらも今、多数の人が関わって共同作業的、分業的に発掘が行われています。
 昨日も書いたように、この大化物二人には、言語は違えども魂の部分で共通するモノを強く感じます。この二人のグローバルな、あるいはコスモロジカルな、そして霊的な世界観こそ、現代の日本、いや世界、地球に必要なものなのかもしれません。
 私もその発掘に携われるよう日々精進していきたいと思います。

Amazon 大東亜戦争後の世界


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