『泣いて生まれて笑って死のう』 昇幹夫 (春陽堂書店)
主催者の方とご縁がありましてお誘いいただき、産婦人科医で日本笑い学会副会長である昇先生の講演会に行って参りました。
演題は「笑いは心と脳の処方箋」。認知症サポーター養成講座ということでの講演でしたが、内容は認知症のみならず、出産、子育て、教育、食生活、ガンなどの病気、老化、そして死にいたるまで、まさに多岐にわたりました。
2時間では語りきれないという感じで、そんなところにも昇先生のバイタリティーと愛情を強く感じることができました。
話題は多岐にわたれども、そこに通底していたのは「笑い」。笑いが私たちの体に及ぼす良い影響については、私自身も経験的に実感を、また書物などから知識をも得ていましたので、きょうの昇先生の具体的なお話は実によく納得できるものでした。
特に昇先生自身の笑顔と、そしてダジャレを駆使した笑いを誘う言霊のおかげもありまして、私の脳ミソも活性化したという感じでした。自称「健康法師」の名に恥じない、皆に元気を与える素晴らしい講演であったと思います。
「笑い」(と「祈り)」の効用の科学的検証については、今日の講演の中のビデオにも登場されていた筑波大学の村上和雄さんに直接お話をうかがったことがあります。笑いが遺伝子レベルで健康に資することが分かっているんですよね。
考えてみれば「笑い」というのは人間のみに許された高度な感情と表情ですよね。今、それを忘れてしまっている人間が多すぎる。
今日の話の中では、「笑う」ということと「泣く」ということが良しとされ、「怒る」ことはストレスの原因であるというようなことが強調されていましたけれども、ワタクシ的には「笑い」と「怒り」はセットで必要だと思っています。もちろん私の言う「怒り」というのは、ちょっと次元が高くて、世間に対するとか不正に対するとか、悪に対するとか、そういう種類の「怒り」です。
そういう意味では「笑い」も人類愛的な笑いに基づくレベルであるべきですね。人を馬鹿にする笑いとかではなくて。あるいはお下劣なギャグのレベルではなくて。
一方でそんな高尚なことを目指すのでなくて、形から入るのもいいかもしれませんね。心から笑うとか怒る機会が減っていますから。
そう言えば、池谷裕二さんからも鉛筆(箸)を横に加えて口角を上げて勉強した方が能率が上がるという話をうかがったことがあります。脳がだまされるんですね、体の動きに。
おかげさまで、今、私の家庭も私の職場も(必要以上に?)笑いに満ちあふれています。たしかにみんな免疫力が上がっているのか、病気になりませんし、精神的にも健康そのもの、多少の失敗や想定外の事態にも動じない強さを持ち合わせています。
やはり「笑い」は素晴らしいですね…とは言っても、状況がそれを許さない方々もたくさんいるわけで、実際そういう方々を良い方向に導いていくのは難しいケースも多々あります。プライベートでも仕事でも、今それが大きな課題と言えば課題ですね。
そう、うまくシンクロしてくれればいいのですが、逆効果の場合もありますから…。
ところで、肝心の「認知症」について。講演や資料のおかげでだいぶ勉強になりましたけれども、はてさて、なんで痴呆を「認知症」に変えたのでしょう。いや、一般に言われている理由、痴呆という言葉が差別的だとか、先天的な「認知障害」と区別するためだとか、それは分かりますが、日本語学的に言って、「〜
症」は「依存症」や「胃酸過多症」や「多汗症」や「高所恐怖症」や「不全症」や「過敏症」などのように、「〜」の部分に「悪い状況」が来るじゃないですか(「花粉症」は微妙ですが)。
だから「認知症」って変だと思うんですよ。いつも違和感を感じる…っていう日本語も変?違和を感じるとは言えないし。難しいですね(笑)。
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