『重力とは何か』 大栗博司 (幻冬舎新書)
アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る
う〜ん、評判に違わぬ名著だ。
中学3年生の理系少年が貸してくれました。中学生が面白かったというのも分かります。
科学に関しては中学生レベルで脳ミソが停止している私ですから、おそらく彼とその面白さを共有できたのでしょう。
あとがきにこうあります。
「本書を書くときに思い浮かべたのは、卒業以来会っていない高校の同窓生でした。私とは違う道に進み科学からは遠ざかっているものの、好奇心は相変わらず旺盛で、筋道だてて説き起こしていけば理解してくれる。そんな友人に30年ぶりに再会して、私が大学で勉強し、大学院で研究を始め、今日まで考えてきたことを語るつもりで書きました」
実際に大栗さんが学び研究してきたことは、世界最先端の難解な物理学であったことは間違いありません。そうして我々庶民の実生活からどんどん離れていく科学の世界を、まさに実感として身近に感じさせてくれる、大栗さんの姿勢と、技術(簡素化や具体化や文章化)に敬意と感謝を表します。
知的興奮と言いますか、センス・オブ・ワンダーでしょうかね。懐かしささえ感じました。そう、小学校高学年から中学生のころ、相対性理論の本を読んでワクワクした、あの興奮ですね。
おそらくは科学者はその興奮(快感)を求めて研究を続けられるのでしょう。科学者になる夢を捨てざるを得なかったワタクシには少しうらやましくもあります。
もう一つ、読了して感じた親近感は、ああやっぱり科学は私に近づいてきているなということです。私になんていうと不遜な感じですけれども、そう、相対性理論によって私から一時遠ざかってしまった物理学は、量子力学によってまた私に近づいてきたというのも事実と言えば事実なのです。
いや、これを言うと科学者の方は嫌悪感を抱くかもしれませんね。しかし、実感として、やはり科学が宗教や文学や音楽や、もっと言えばオカルトの世界に近づいてきているのは確かです。
たとえば最近の私の妄想である「時間は未来から過去へと流れている」という「実感」についても、未来から過去に戻る反粒子が想定されたり、超弦理論がヴァイオリンの弦が奏でる無限の音色や旋律に擬せられたり、観察者の存在やその意志が現象に影響したり、波動やゆらぎといった、一時期疑似科学と揶揄された言葉のリアリティーが増したり、とにかくワタクシの脳ミソのセンスと科学の成果が不思議と一致…ではなくマッチしてきているんですよね。
私はもう科学者にはなれません。当たり前です。しかし、ある意味今まで反対側から同じ何かを求めてジタバタやってきたのかもしれません。この本を読んでそんなことを感じ、少しうれしくも思いました。
私の「実感」としては物理学のゴールは近いような気がします。「人間理論」を飛び超えた美しいアイデアによって宇宙の統一理論が発見されたその時、私たちは神を観るのかもしれません。楽しみです。
最後に、「重力とは何か」というタイトル、ちょっともったいないかなあ…。ヒッグス粒子ブームにあやかったのではないと思いますが。入り口はたしかに重力とは言え、もっと広大なテーマを扱っていると思いますので。
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