過去は滓(カス)…未来に向かって生きる
今日は高校の卒業式。手前味噌となってしまいますが、我が校の厳粛な式典は本当に素晴らしい。
普段は世話を焼かすことも多かった生徒たちも、最後の最後にけじめと誇りのある姿を見せてくれます。まさに有終の美。
式中、いろいろな方のお言葉がありましたが、今日特に心に残ったのは、山川宗玄老師の戒辞でした。山川老師は岐阜の名刹正眼寺の住職であり、本校の名誉校長でいらっしゃいます。
さすがは禅の名僧。卒業生の晴れの日に、ある意味非常に逆説的な言葉を贈ってくださいました。
「過ぎたものは全てカスである。国体で優勝しようと有名大学に入ろうと全てカス。今を、今からを一生懸命生きよ」
私は心から感動しましたね。特に最近、「時間は未来から過去へと流れている」を出発点とする新しい日本の哲学を構築中ですから、老師の言葉はまさにそれを後押してくれる「仏様の指」でした。
最近私的ブームである仲小路彰も「未来学」を唱え、「歴史は未来からやってくる」と言っています。原始仏教の経典をよく読んでみても、やはりお釈迦様は同様のことを言っている。
仏教と言うと、いわゆる「因果」の法則で、過去の因縁に我々がとらわれていることを強調しがちですけれども、実は、究極の目的は、そこから解脱することじゃないですか。
ポール・ヴァレリーは「湖に浮かべたボートをこぐように人は後ろ向きに未来へ入っていく。目に映るのは過去の風景ばかり。明日の景色は誰も知らない」と言っていますね。
つまり、私たちは「過去」にとらわれすぎなのです。過去と現在の因果というのは、私たち自身が認知した瞬間に生じるのにも関わらず、まるで科学的に既に存在していて消えない関係性であると思い込んでいる。
お釈迦様はそこを指摘したんじゃないかと、最近思うんですよね。自己の認知(私の言うコト)に惑わされるなと。未知と不随意であるモノにこそ未来の可能性があると。
ま、これは私の妄想ですけれども、いや、妄想こそ新しい真理を導き出す方法論であると、バカみたいに私は信じています。
今日の老師のお話は、「前を向いて生きよ」ということだと思います。私も「過去には学ぶべきことは多かれど原因はない」と考えて基本前を向いて生きているつもりです。
老師の本「生きる」をさっそく注文して読んでみようと思います。表紙にある正眼寺の庭の松のお話もありました。卒業生たちは実際に参拝して見てきていますしね。
岩に生えた奇跡の松。私たちもこの松のように前を向いて生きていかねばなりませんね。
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コメント
「過ぎたものは全てカスである。国体で優勝しようと有名大学に入ろうと全てカス。今を、今からを一生懸命生きよ」この一文を読んだ瞬間、鳥肌が立ちました。私の人生の師匠からも、似たようなことを言われたことがあり、その言葉の意味が、今、より一層深くわかったきがします。
投稿: ベンジャミンフランクリン大好き人間 | 2013.04.06 20:03