『我が教育の欠陥』 新渡戸稲造
体罰問題、いじめ問題、早期退職問題…日本の教育はどうなってしまったのでしょうか。
今日、内田樹さんの「教育について思うこと」という文章を読みました。
全てに賛成というわけではありませんが、なんでも日教組(のような諸悪の根源、悪意の主体)のせいにするのは思考停止であるという意見には同意です。
現代の教育問題の原因の全てが日教組にあるわけではありません。もちろん戦前の教育が素晴らしかったというわけでもありません。
今日は、戦前の教育、つまり明治以降の西洋的な学問の世界の問題点を鋭く指摘した文章を紹介しましょう。
かの新渡戸稲造の「我が教育の欠陥」です。1907年、明治40年の文章です。当時、新渡戸は第一高等学校の校長だったと思います。
敬虔なキリスト教徒であり、間接的とはいえクラーク博士の薫陶を受け、ある意味では自ら進んで西洋化への道を選択したはずの新渡戸が嘆いてるのは、日本古来の「品格(品性・正義など)」を失ってしまった日本人の姿でありました。
自らも西洋的な(科学的な)教育を通じて「霊性」を犠牲にしてしまったと嘆いています。
つまり、現代の教育問題の端緒は明治維新、文明開化にあったということです。和魂洋才を目指すも、結局は魂も洋化してしまった。そんな苦悩が読んで取れます。
新渡戸はクエーカーとして悩んだのでしょうね。それは「武士道」を読んでも分かります。なんとか西洋的な霊性と日本的な霊性とを合流、一致させようと惨憺している。
前も書いたように、戦後教育では「霊」という言葉も現場から排除されていきました。世間でも「霊」はオカルトになってしまいました。「霊」について語ると怖がられるか、馬鹿にされるか、避けられます(苦笑)。
コトに走りモノを幽閉してしまった現代。
単純に「昔は良かった」と言うつもりはありません。しかし、どのタイミングで私たちが自分たちの「霊性」を失っていったのか、そしてそれが誰のせいでもなく、実は自分たちの「選択」によって行われたということを知ることは重要だと思います。
我が教育の欠陥 新渡戸稲造
我政府が教育上に於ける施設の多大なることは否むべからず。明治年代の教育法は、維新前の教育法を継承せるものに
吾人は智識を偶像として拝し、
予は信ず、人の衷心、聖の聖なる
予の見るところを以てすれば、科学上驚異すべき発見は、皆その発見の在るに先んじて、既に久しく人の心に覚知せられたるものなるが如し。語を変えていわば、科学は常に、人の預覚の
その初にはソクラテスの如く、洞察眼を備え、高尚なる思想、清浄純潔なる心念を育して、霊智と親しく交る人あり。これに継ぐに、プラトーの如く、その師の胸裡に雑然として存在したるものを取りて、雄弁荘重なる言語に托するものあり。而して後、アリストートルの如き者ありて、先人が悟覚し、また感応するままに語りしものをば、形式法則に配列す。もしアリストートルにして、ソクラテスの如く、霊智に従うことに忠実ならんか、また師の心に同情すること、プラトーの如くならんか、彼の科学哲学に於ては毫も非難すべきものなけん。されど彼れは感応を犠牲としても科学的ならざるべからず、霊的省観を失うとも、哲理的ならざるべからずとするものならば、彼れたるもの果して人教――
我が教育は全力を捧げ、霊性を犠牲として、アリストートルの業をなしたり。これ一椀の
人は、アングロ、サクソン人種に許すに、最大または最多数の哲学者を出したる事を以てせざるべし。事実は科学が彼らの中に於て、最も進歩したることを証せず。また英文学もその富を挙ぐとも、決して
キッドが、その種族の偉大なる原因は、平民的なる日常道徳を有してこれを行うことと、勤勉にして、真理を愛し、かつ正直なるとにありと主張するは正当の説にして、またデモランがこれらを以て、アングロ、サクソン人種の雄大なる所以の主質なりと説明せることも、また大にその理あり。
一種の感情家のいわんが如くに、日本は挙げて一個の美術国たるべく、吾人は国民をして、この国土の如くに美しからしむべく、吾人は、吾人の運命をして、世界他邦の玩具ならしむべきものならんには、吾人は我が子孫を教育するに、祖先の厳正なる性格に
されど今の時は夢に
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