「先」&「経」の謎…
今日は2月11日のコンサートの練習で東京へ。
いつもなら高尾に車を置いてそこから電車で都心に向かうのですが、今日はなぜか車で最後まで行こうと思い、余裕をもって富士山を出ました。
しかし、思わぬところで事故渋滞に巻き込まれ、結局1時間以上の遅刻。皆さまにご迷惑をおかけしました。
高速で渋滞に巻き込まれ、ようやく下道に降りたら降りたで、東京の迷路にはまり、時間はどんどん過ぎていく。
目の前の信号がことごとく赤になる。目の前のバスをなかなか追い越せない…今までも何度も経験したことですが、やっぱりなんとも言えない不快感に陥りますね。
これこそが、私の言う(本居宣長の言ったのとは違う、正しい)「もののあはれ」でしょう。不随意、不如意への慨嘆。
もうどうせ間に合わないし、せっかくですから(?)、その不快感を分析することにしました(笑)。
そう、最近考えている「日本人の時間観」の考察であります。
で、あることを思い出したので、備忘のためにここに書き記しておきます。
実は、この「日本人の時間観」を含めた「日本語による日本人のための日本の哲学」をいずれあるところに連載する予定ですのでお楽しみに。
ということで、全部は書けません。あたためておいて、バン!と出します。今日はチラ見せだけ(笑)。
まず、「時間は未来から過去へと流れている」を証明する日本語です。
それは「先」という言葉。「さき」です。
皆さんは、「さき」と言うとどういうイメージを抱くでしょうか。
空間的には運動方向やその端を指す言葉ですね。「→」なら右端というイメージでしょう。100メートル先と言えば、前方100メートルということです。
では、時間的にはどうでしょう。
実はこれが大問題なのです。たとえば「10年先」というと、現代では「10年後の未来」を指しますよね。しかし、これが古代日本語だと逆になるんです。「10年前」ということです。
「先の副将軍…」というのを思い出さずども、「さっき」という言葉、これは「先」なんですよ。つまり「先」は「過去」なのです。
もうお分かりかと思いますが、空間的な「先」と時間的な「先」を組み合わせてると、時間の流れる方向が想像できますね。
さて、次は「経つ」という言葉。これはですね、「時間が経(た)つ」とか「いつまで経っても」というように使われます。
これは実は驚きだったのですが、日本国語大辞典に「経つ」の見出しがないんですよ。語源となった「立つ」の項の「五」にようやく「経つ」が出てくる。
この事実は非常に重要なことを示唆しています。もともと「春が立つ」とか「月が立つ」とか、そういうふうに使っていたんですね。「立春」「ついたち」です。
この「立つ」はもちろん「現れる」という意味です。それが中世以降、経過するという意味で使われるようになった。
おそらく中国の時間観の影響があったのでしょう。そして、その中で「経」という漢字が、経過を表すことを知り、それを「たつ」という和語に当てはめ始めたという歴史があったと思われます。
そこで不思議な符合が起きます。「経」という漢字、ご存知のとおり、「経線」のように「縦」という意味があります。もとは「たて糸」という意味ですよね。
日本語の「たて」はもちろん「たつ」の連用形から生まれたわけですから、そうしたイメージと、「経過する」という意味の「たつ」の成立は、深く関わっていたのではないかというのが、私の新発見であります。
もちろん、「経る(へる)」(古語で言うと「ふ」)との関係もいろいろ考えられます。古くなるという発想…。
ま、どうでもいいことですか。しかし、こういう発見から、実は日本人の時間観の変遷が見えてきたりするんですよ。
そのあたりも含めて、春頃から連載しようと思いますのでご期待ください。
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