山下菊二 『あけぼの村物語』
我が山梨県の裏歴史の一つ。曙事件。県民にもほとんど知られていません。
それを描いたのがこの山下菊二の「あけぼの村物語」。山下の代表作としてテレビなどでも紹介されています。
山下菊二は戦後を代表するシュールレアリスム画家。彼独特の土着的で怪異的な作風は、そのテーマの重さに反してどこかユーモラスでもあり、不思議な魅力を放ち続けています。
ちょいと手抜きをして、画像検索で彼の作品を見ていただきましょう。こちらです。
山下は戦中、兵隊として上官に逆らえず、結果として戦争に加担せざるを得なかったことを悔い、戦後は共産党員となって、実際に山村工作隊に所属して活動したり、絵を描いたりすることで、権力や天皇制と闘い続けました。
この「あけぼの村物語」に描かれたのは、1952年、山梨の貧村、南巨摩郡の曙村で実際に起きたある事件を題材としています。
その事件こそが冒頭に書いた山梨県の裏歴史です。いまだに解釈の分かれている事件でありますが、いちおうwikiの内容を貼っておきす。
(以下引用)
事件の発端
平家の落人の村と言われた寒村曙村、山梨県南巨摩郡曙村は平家の落人伝説がある貧しい村であったが、一方で資産家のSが力を奮い、農地改革以降も山林地主として影響力を保持していた。
日本共産党は、この村に山村工作隊を派遣。「山林地主からの山林の解放」を掲げ、「Sを人民裁判にかけ、財産を村民に分配する」と主張してオルグ活動を展開した。
事件の概要
1952年7月30日夜、10人の山村工作隊が竹槍や棍棒を持ってS宅に押し入り、就寝中のS本人のみならず、妻や家政婦・小学生3人も竹槍で突き刺し、棍棒で殴打して重傷を負わせた。更に家財道具を破壊した後、現金4,860円と籾1俵を強奪して逃走した。
この事件の最中、党員一人が事故死し、実行者も全員逮捕された。
その後の顛末
1964年、最高裁判所は被告全員に懲役2年から8年の有罪判決を下した。
日本共産党は、この事件について菅生事件と同様の公安警察による謀略事件としており、事件発生50周年を記念したパンフレットでも同様に主張している。一方で共産党に批判的な立場からは、山村工作隊に代表される武装闘争路線が招いた政治テロの一つとして捉える見方も根強い。
(引用終わり)
まあいずれにしても昭和の暗部でありますな。ある意味熱い時代であったとも言えますが…。
私はこのあたりの時代に関しては今勉強中です。私が生まれたのが1964年ということで、だんだんとこういう空気が希薄になっていった時代に生きて来ましたから。
山下菊二は前述のように共産党員であり、山村工作隊の工作員だったので、当然、この絵を労働者の立場から描いています。
しかし、絵画としては地主(資本家)が視点になっているとのこと。その辺の解釈も複雑で難しいところです。
wikiの記事に「党員一人が事故死」とありますが、工作員が地主に棍棒で殴られ、消防団に追われた末に富士川で溺死したというのが真相のようです。
本来はっきり二分されているべき、労働者と資本家、被害者と加害者が、この事件では複雑に交錯し、より一層謎を深めている感じがしますね。
それを絵画という次元で昇華した作品なのでしょう。
山下菊二は鳥が大好きで、自宅(アトリエ)にたくさんのフクロウを放し飼いにしていたそうですね。たしかにフクロウ可愛いですけど、あんなでっかい鳥が家の中をバッサバッサ飛んでたら、お客さんはビックリですよね。
大江健三郎の本の装丁もしていた山下。やっぱりそういうラインもあったのか。
あっ、それから、山梨の山村工作隊と言えば、あの、私の尊敬する歴史学者の網野善彦も関与してたんですよね。う〜む、なんとも複雑な裏歴史でありますな。
そのあたりもあえて掘り出して自分の中で「総括」してみます。
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