『日本破滅論』 藤井聡・中野剛志 (文春新書)
実に楽しい対談。破滅なのに楽しいとは、これいかに。
まず言えるのは、非常にコトやモノの本質を鋭く突いているということ。このお二人の対談ですから、当然反論や圧力が想定されるような内容ですが、だからこそ私たちに「観」のきっかけと力を与えてくれる。
そう、対談中に五輪書の「観」と「見」の話が出てきます。物事を近視眼的に「見る」のではなく、全体的に俯瞰的に包括的に「観る」ことこそ、破滅回避、いや破滅を早めようとする勢力への対抗手段になると語られています(そういう言葉ではありませんが)。
その「観」の姿勢こそ、私のいつも心がけていることですね。できているかは別として、常に意識していることです。
我々はともすると近視眼になりやすい。物事の表層しか見ない、あるいは見もしないで(自分で確認しないで)人の言うことを真に受けてしまう。そして、そこにつけいる悪モノがいる…。
中野さんの言うBKD(売国奴)もそういう悪モノの一つでしょう。あるいはこの本で散々槍玉にあがっている新自由主義者たちや、橋下徹大阪市長も。
そうそう、最近の桜宮高校問題への対応、まったくひどいとしか言いようがありません。ああいう体罰以上の横暴を世間が許しちゃいけませんよ。あえて私も暴論を言っちゃいましょうか。私が桜宮高校体育科を希望している中学生だったとしたら、ショックのあまり自殺しちゃうかもしれませんよ(あくまで暴論としてです)。
橋下氏はじめ大衆操作術を得意とする輩やBKDに共通しているのは、この本でも別の場所で語られているように、「宗教性」が欠如していることだと私は思います。
真善美に対する感性が非常に弱い…というかない。ワタクシ流の言い方をすれば、自然科学や法律や民意というコト(フィクション)原理主義に陥っており、モノ(霊的存在)の価値をあまりに軽視(無視)していることです。
皆さんご存知のように(あるいはご心配のように…笑)、私はコト社会に生きる現代人として、モノ世界の研究や実践を積極的にあえてやっております。それでようやくバランスが取れている感じがする(安心して生活できる)。
「宗教性」と「教団」はまた別物ですよ。前者はモノ、後者はコトですから。特定の宗派や教団にこだわるのは単なる原理主義者です。
そういう意味で、彼らはたぶん不安なんでしょうね。一種の原理主義者ですから。そうするとすぐに敵を作りたがるし、異様に攻撃的となる。困ったものです。
藤井さんと中野さんは、そういう意味では非常にバランスの取れた論客であると感じます。コトとモノのバランスですね。そして、本質はモノの方にあるということを知っている。
全然違うジャンルになりますが、私は彼らの対談を読んで、「星の王子さま」を思い出してしまいました。
「大切なものは目には見えない」
経済や理論や数値も無論大切です。それを「見る」ことなしに私たちは生きられません。しかし、その先にある「大切なモノ」を「観る」ことも忘れてはいけません。
それにしても「おわりに」は面白かったし、なるほどなあと思いました。藤井さんがおっしゃる「破滅論」「破滅観」、ああ私も似たような感覚を持っていると。たしかにどうせいつか滅びる。しかし、その滅びる(壊れる)モノをあえて滅びさせよう(壊そう)とする奴らには怒りがわく。多勢に無勢であればあるほど闘魂が湧いてくる。そのとおりです(笑)。
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コメント
自殺はいけません。死んだら終わりです。
残されたものは生きていかなければなりません。
だからといって、
死んだもののことを簡単に忘れてもいいのでしょうか。
スルーしてはいけないことを忘れないように、
滅茶苦茶でも一石を投じているのではと、
橋本市長の行動を捉えているのは私だけでしょうか。
同じことが繰り返されないように願います。
投稿: tadataka | 2013.01.22 15:44
> その「観」の姿勢こそ、私のいつも心がけていることですね。できているかは別として、常に意識していることです。
それが出来てますかね? 学校経営に深く携わる以前の庵主様は、もっと達観しておられたと勝手に思っておりますよ。
> 我々はともすると近視眼になりやすい。物事の表層しか見ない、あるいは見もしないで(自分で確認しないで)人の言うことを真に受けてしまう。
私には最近の庵主様こそ近視眼的なのではと思いますよ。昔はもっと大らかではありませんでしたか? 物事を一々良し悪しや好き嫌いで分けることさえしなかった。BKD だの B 層 だの不用意にカテゴライズすることだってしなかった。むしろ受け入れていた。
>私が桜宮高校体育科を希望している中学生だったとしたら、ショックのあまり自殺しちゃうかもしれませんよ(あくまで暴論としてです)。
やれやれです。「生徒の心情」と見せかけた、庵主様ご自身の動揺がありありとうかがえます。次の学校に送り込むことこそが教師の仕事であると、いつの間にやら自然に身に染みついてしまったのでしょうか? 前回の「暴力」に関してもそうでした。私にはただ、「これ以上教師の仕事をやりにくくするな。」としか、その文章から受け取れませんでしたよ。
>「大切なものは目には見えない」
宗教に凝り固まった友人・知人の誰しもがそう言いました。「君たちは目に見えるものしか信じない。目に見えないものにこそ真実がある。」な~んてね。
彼らはそう言って、目の前の都合の悪い現実から目を背けるために「宗教」を求め、都合の良い、自分に心地の良い「教団」という居場所に逃げ込んで行きました。
>多勢に無勢であればあるほど闘魂が湧いてくる。そのとおりです(笑)。
都合の良い仮想敵を勝手に作って盛り上がっちゃうところも、彼らとそっくりです。
投稿: LUKE | 2013.01.23 05:56