『隠された歴史−そもそも仏教とは何ものか?』 副島隆彦 (PHP研究所)
う〜ん、昨日の井筒先生の御本とは対照的…いや、もしかして似てるとか(笑)。
最近、苫米地英人さんや宮崎哲弥さんなど、一見仏教とは関係なさそうな現代的(芸能人的?)知識人たちが、その仏教マニア(オタク?)ぶりを発揮して、いろいろな本を出していますね。
副島さんのこの仏教に関する本も、ちょっと意外な感じがします。副島さんというと、左右を超えた政治・経済評論というイメージがありますから。
仏教=キリスト教、観音・弥勒菩薩=マリア様か…まあ、ここまでぶっ飛んでると、副島さん自らが「と学会」に所属し揶揄している「トンデモ本」になっちゃいますよ。
ついでですから、ここで「とんでもない」という言葉について、ちょっと書かせてもらいますね。
「とんでもない」を、たとえば「トンデモ」と言ったりしますが、「ない」を否定の意味と捉えると、「とんでもない」と「トンデモ」は逆の意味になってしまいます。
しかし、不思議とそういう論理矛盾に対する生理的不快感はないじゃないですか。
これって、例のあれですよ…東北地方に多くある強調の「ない(ねぇ・ねぁ)」。「やかましねぁ=とてもやかましい」、「おそろしねぁ=とても恐ろしい」みたいな。
標準語でも「せわしない=とてもせわしい」、「切ない=とても切実だ」のような形で残っています。
国語学(日本語学)的には「とんでもない」の語源は明らかにされていないようですが、おそらくこの私の説は間違っていないと思いますよ。
で、「とんでも」がどういう意味かというと、「とんだことをしでかした」の「とんだ」と同様に、やはり「飛んだ」でしょう。
ですから、副島先生がぶっ飛んだとしたら、やはり「とんでもない」「トンデモ」になってしかるべきなのです。
…というような、ワタクシの半分ハッタリ半分本気のこの語源説のように、副島先生のトンデモももしかすると案外当たらずとも遠からずかもしれませんね(笑)。
私は、副島さんとは逆に、西進した仏教がキリスト教の成立に影響を与えた、つまり、ブッダの言説がイエスの思想に大きな影響を与えたという仮説を持っています(こちら参照)。
そういう意味では、私も副島さんと同じくらい「ぶっ飛んでいる」のかもしれません。
井筒俊彦先生は「東洋哲学(思想)の共時的構造化」を目指しましたが、副島さんとワタクシは、もしかして東西の共時的構造化を目論んでいるのかも…。
ま、読み物、物語としてはけっこう面白い本だと思いました。あの独特の「断定調」をもってして、このトンデモな内容を語っているわけですから、まるで木村鷹太郎のような感じさえします。副島先生もそういう高みに昇りつつあるのでしょうか。
そう考えると、昨日紹介した井筒先生もかなり「ぶっ飛んでいる」哲学者ではありましたね。もちろん鈴木孝夫大明神も。天才とはそういう紙一重な存在なのでしょう。ある意味構造化(コト化)を拒否する大化け物(モノノケ)ということです。
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