『レッスルキングダム7 in 東京ドーム』 (新日本プロレス)
今年はPPVにてじっくり観戦いたしました。
なかなか良い大会だったのではないでしょうか。おおむね満足です。
なにしろ大晦日のIGFがあんな感じで終わってしまったので(苦笑)、なんとなく煮え切らない、燃え切らないまま年を越していたんですね。それがいちおう昇華されたような。
ただ、これが理想のプロレスかというと、なんとなくそうでもないよう気もする。いや、理想のプロレスなんていうものはありそうでないのかもしれない。いつまでも「何がホンモノか」という問いや夢を与え続けてくれるのがプロレスなのかもしれません。
そういう意味では、やっぱり永遠の「物語」なんでしょうね。霊界物語並みに謎だし、聖俗入り乱れている。まじめなのかふざけているのか、ガチなのかヤオなのか、そんな世間的な基準を超えたところにある世界なのでしょう。だからやめられない。
いくつか心に残る試合がありました。
まず、永田裕志vs鈴木みのるかなあ。中村あゆみの生「風になれ」がかっこよかったな。
やはりベテランの試合は安心してワクワクできる(笑)。ここのところ、みのるちゃんの負けっぷりがいいですね。
彼から直接「オレはいつでも人を簡単に殺せる」という話を聞いたことがありますが、そういう戦闘の技術をもっているという裏打ちが、試合に説得力を与えるのでしょう。
それこそが「ホンモノ」の条件だという考え方もありますよね。しかし、それが全てではないところもまたプロレスの深いところ。
ということで、ある意味では対照的な説得力を見せてくれたのが、IWGPジュニアヘビー級選手権試合3WAYマッチの、プリンス・デヴィットvsロウ・キーvs飯伏幸太。
これはすごかったですねえ。身体は小さい3人ですけれども、ある意味では今日のドームで一番大きく見えたかもしれない。
すさまじい高度な戦いでした。こういうアクロバチックな試合というのも、極めれば命懸けの説得力になります。死なないどころか怪我をしないでああいうことができることに、人間の生命力を感じましたね。
飯伏選手ともいろいろ話したことがありますが、全く普通の朴訥な青年なんですよね。どちらかというと殺気が全くないというか(笑)。それが「変身」するんでしょうね、ヒーローに。それもまたプロレス的魅力の一つでしょう。
続きまして、私にとってはこれがメインでした、中邑真輔vs桜庭和志。これは実によかった。久々にドキドキワクワクしました。
言うまでもなく総合格闘技の世界で「プロレスラー」として名を馳せた桜庭。彼が、純プロレスの世界に「デビュー」したという感じでした。
こう言ってしまうとなんとなく軽い感じになってしまうかなあ…やっぱり、総合もプロレスの一部だなと。試合前は総合経験者同士、なんちゃって総合をやっちゃうんじゃないのかなと思いましたが、終わってみれば完全なプロレスという印象が残りました。
桜庭はほとんど総合時代の動きに徹していましたね。しかしそれが不自然ではなく、まったく自然にプロレスになっていた。
以前、彼の話を聞く機会もありました。彼は変身しないんですよね。ヒーローものが好きだったり、マスクをかぶって入場したりもしますが、実際の桜庭はいつも同じ。どんなジャンル、どんなリングでも、彼は彼らしく戦います。逆に言うと、誰も桜庭にはなれないし、真似どころか近づくこともできない。強烈な個性です。
それを中邑がうまく利用したとも言えます。今まで中邑の試合にはあまり感動しなかったのですが、今回は「やるな」と思いましたね。クネクネも含めて、けっこう桜庭と個性を拮抗させてましたし、案外二人の個性は噛み合っていた。
こういう意外なアンサンブルというのもプロレスの魅力の一つでしょう。
メインの棚橋とオカダについては、まあ及第点ということで。オカダのこれからに期待しましょう。たしかに素質はいい。まだまだ若いので、どんどん勉強して「説得力」を身につけてほしいと思いました。
というわけで、大晦日のIGFとは対照的な興行でした。いや、こちらの方が良かったということではありません。アントニオ猪木vs新日本(現在のプロレス)という戦いでもあるわけですから。お互いに敵も必要なんですよね。予定調和だけになった時に、プロレスは終わるのでしょうから。
「プロレスを、取り戻す」…2013年、プロレスも再生するでしょうか。
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