「大地讃頌」(カンタータ「土の歌」より)と封印された最終楽章
今日は忙しかった。人前でたくさんしゃべったなあ。
午前中は高校のオープンスクールで中学生とその保護者の方々に、午後は中学の説明会で小学生とその保護者の方々に、そして、夜は…。
夜は地元のコーラス団体のファミリーコンサートがありまして、その団体にはカミさんや友人、同僚や教え子などが所属していることもあって、聴きに行くことにしました。
それがまた実に良かったのです。昨年も感動し、私の音楽観を一変させてしまうような演奏会だったのですが、今年はそれにも増して素晴らしかった。技術論など軽く吹き飛ばしてしまうほど、魅力的な「音楽」体験でした。
うん、いろいろな音楽に接してきましたが、これはやはり特別だなあ。音楽に「心」がいかに大切か、合奏や合唱の魂というか、ホント音程とか解釈とか、そんなことはどうでもいい(わけではないけれども)という次元の感動、アマチュア音楽の神髄というべきものがそこにありました。
で、私はただの聴衆であったはずなのに、なぜか演奏会の最後にコメントを迫られまして(笑)、3時間半に及ぶ感動的な音楽会のシメをしなくてはならなくなりました。
そこで、一言正直に感じたことを語らせていただきました。そう、この大地讃頌を聴きながら、ふと思ったことがあったのです。
「もしかすると『歌』があるのは宇宙でこの地球だけかもしれない。そんな奇跡の星に生まれて良かった」
おおげさとかカッコつけではなく、本当にそう思えたのです。それほど魂動かされる「歌」を聴いたのですね。本当に感謝です。
実を言いますと、私自身は教員になるまで、この「大地讃頌」を知りませんでした。私は東京と静岡で中学時代を過ごしましたが、合唱の文化があまりなく、この歌も歌ったことがなかった。しかし、山梨では伝統的に中学校で頻繁に歌われており、生徒たちのみならず、親御さんたちにとっても共通の文化として歌い継がれています。
そう、フジファブリックの市民会館凱旋ライヴのオープニングも、志村くんたちの歌う下吉田中学校の大地讃頌でしたね。そんなところにも「伝統文化」としての大地讃頌の存在がうかがえます。
さて、この名曲「大地讃頌」、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、カンタータの最終楽章なんですよね。
佐藤眞作曲のカンタータ「土の歌」は1962年の作品。上の動画はそのオリジナル・バージョン、すなわちオーケストラと混声合唱で演奏されています。
今ではあのピアノ伴奏バージョンがあまりに有名になっていますけれども、こちらの方がやはり美しいし感動的ですね。オーケストレーションもなかなか見事です。
そして当然、カンタータ全体を聴いた方がよりこの曲の価値を味わうことができます。上の動画から全楽章を聴くことができますので、ぜひ。
そうしますと、原爆、水爆、核実験、そして科学の暴走や人間の愚かさを扱った作品だとういことが分かりますね。そういう時代性も理解した方がいいと思います。
今日の音楽会でもその点に触れられていました。死の灰による汚染、天地の怒り(天災)ということから、昨年の大震災や原発事故を思い起こさせると。そのとおりだと思います。
そしてそして…意外に知られていない事実ですが、この大地讃頌は実は最終楽章ではない!?
「天地の怒り」、「地上の祈り」、そして「大地讃頌」で反省した人類に大地の女神が降臨するが、その女神がなんと人類を全て食い尽くし、人類がいなくなってようやく大地(地球)に真の平和が訪れる…。
う~む、これはすごい。作詞者の大木惇夫さんと佐藤さんはそこまで想定していようです。ここにも時代性を感じますね。そう、あの時代は封印作品の時代でもあります。
お二人は必要な時が来たら、本当の最終楽章を開封するとお考えだったとのこと。はたしてそんな時が来てしまうのか。大木さんが亡くなった今となっては、それは永遠に封印されることになるのか、それとも…。
そんなことを思いながら、現在の最終楽章「大地讃頌」を歌ってみるのもいいのではないでしょうか。
最後に、佐藤眞さん自身による「大地讃頌」論、なかなか興味深い。編曲、移調、著作権の話など、なるほどと思える内容です。こちらでどうぞお読みください。
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コメント
貴兄の文章のほんの一部に注目してしまうのは失礼かもしれませんが、お尋ねしたいです。第八楽章「大地の女神」?の噂はどちらで入手されましたか?
投稿: 卯多原 塔 | 2014.03.18 19:50
卯多原さま、コメントありがとうございます。
私は知り合いの合唱関係者から聞きました。
自分では確認していません。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2014.03.19 17:24
東急ジルベスターコンサート(2014-15)で大地讃頌が演奏され、ちょっと検索してここへたどり着きました。
20何年ぶりかに大地讃頌を聞きましたが、オーケストラ版は初めてで、ちょっと新鮮さを感じました。
投稿: テツ | 2015.01.01 01:39