「、」「。」の意味
期末テストに「。」「、」をつける問題を出しました。古文です。枕草子です。
私は原典(原点)主義者なので、教科書のあの「春はあけぼの…」は使いません。それについてはこちら本当の「春はあけぼの」とは…という記事をご覧ください。皆さんが暗唱していたあの枕草子は実は間違いだった!?かも。
それほど、「。」や「、」というのは重要なのです。文脈が変わるんです。
さてさて、それでですね、上の表ですが、今日のニュースに「、」「。」なぜ多い 政党のキャッチコピーというのがありました。
いやいや、こりゃニュースじゃないか。世間的にはどうでもいいと言えばどうでもいい。けれども、私はやはり(自称)日本語・日本文化研究家でありますから、これはいちおう食いついておかねば。
まず、これって「キャッチコピー」なのでしょうか。「キャッチ」するための「コピー」といえば、たしかに間違いではありませんが、なんか政治も商品みたいで違和感ありです。
まあ、それはいいとして、たしかに言われてみると最近のコピーには「。」や「、」が多いような気がしますね。
糸井重里さんをはじめとする現代のコピーライターさんたちが、こういう手法を考えついたのでしょう。しまいにはモーニング娘。みたいに、いきなり名前に「。」をつけたりするようになりました。
本来、句点は文章の終わりを示す機能を、読点は息継ぎとしての機能や文脈(修飾関係)を明確にする機能を持つ記号です。
しかし、たとえば自民党の「日本を、取り戻す。」ですと、「日本を、」の「、」は、息継ぎでもないし、修飾関係を規定するものでもない。あえて言えば、息継ぎにもなりうるかなあ。実際、安倍さんは「日本を」と「取り戻す」の間に間(ま)をいれて言ってますよね。
そう、そうして間を空けることによって「日本を」、そして「取り戻す」が強調されるわけです。読点に強調の機能が生まれたと。
そうして強調されることによって、「日本を取り戻す」という文に特別な意味が生じます。「◯◯に取られた△△を取り戻す」という普通の意味ではなく、「ついのまにか失われてしまった日本を取り戻す」というような意味があるように思わせる「、」なんですよね。
それは民主党の「動かすのは、決断。」もそうです。「(日本を)動かすのは(あなたの)決断(次第)」という意味でしょうかね。他にも解釈はありそうですが、「動かすのは決断」と書いてしまうと、決断が動かすの目的語と読めてしまう危険性もあります。
ある意味では、こういうところに、日本人、日本語の好む「行間」のセンスというのが生きているとも言える。
それから「!」よりも「。」を使うようになってきたのは、声高に叫ぶ(騒ぐ)よりも、決然と、淡々と語る方が説得力がある時代になってきたからとも言えそうです。
しかし一方で、「行間」は「ムード」を醸してしまうので、政治のイメージ化をさらに促してしまう危険性もあります。雰囲気は気分しか生みませんからね。
もちろん導入としての「ムード」「イメージ」「雰囲気」「気分」というのは大切です。しかし、そこから中に招き入れる工夫が各党にあるか…ちょっと疑問ですね。結局「キャッチ」自体が目的になっているような気さえします。
今後「、」や「。」以外の記号も生まれてくるかもしれません。というか、絵文字や顔文字が政党のコピーに使われるようになったりして(笑)…この(笑)とか。
「動かすのは、決断(笑)」とか、「日本を、取り戻す?w」とか、「今こそ、維新を(^_^;)」とか…おっとこんなこと書くと怒られそうだな。
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