今日は何の日?(その2)…大正天皇の和歌
今日は何の日でしょう…クリスマス。イエス・キリストの誕生日。
普通の人はそう答えるでしょうね。もちろんそれでも結構です。
でもなあ、日本人なら、もう一つ違った答えを用意していただきたいものです。
4年前の今日、そのことを書きました。こちら「今日は何の日?…大正天皇の漢詩一首」という記事です。
そう、今日12月25日は昭和の誕生日。すなわち大正天皇が崩御され、昭和天皇が即位した日なのです。
戦前は国民の休日でしたから、そこから日本のクリスマスのお祭りムードが始まったとも言われています。
それにしても日本は不思議な国ですね。キリシタン…いやクリスチャンはそんなにいないのに、この騒ぎですから。他国、異教の王の誕生日を祝うのに、その二日前の天皇誕生日をお祝いする人はあんまりいない。
まあ、いかにも日本らしい「なんでもいい」「どうでもいい」主義の現れでありましょうか。
そうそう、先日の佐治晴夫先生のレクチャーでも語られていましたけれども、イエスの誕生日はもっと暖かい季節だったんですよね。
それをおそらく日が長くなり始める冬至の頃にしてしまった。太陽の復活に合わせたということでしょう。世界中の「太陽信仰」の影響を受けたものに違いありません。
さて、今日は4年前の漢詩に続いて、大正天皇の和歌を一首紹介しましょう。
前の記事に書いたとおり、大正天皇の漢詩の腕前は相当のものです。多作家というだけでなく、作品の質もなかなか高い。陛下の純粋な心を映したような、ストレートでシンプルな作風です。
あれから私も、大正天皇の漢詩を数十首訓み下しましたが、うん、これはいかにも神がかっているなと感じ入りました。私たちシロウトというか庶民からすると、あそこまでストレートに世の中を見ることができない。視点、視線に濁りがないので、言葉も透き通って感じられる。
その後、私は尊敬する歌人笹公人さんに誘われて短歌を始めました。実際やってみるととにかく自分の「濁り」に辟易するんですよね。変な知識や名利にとらわれて、視線や視点が濁る。そうすると言葉が嘘臭くなる。
言霊が発せられないのです。
そうそう今日たまたま、中学1年生の歌が歌会始に取られたというニュースがありましたね。やはり子どもの言葉は澄んでいるのでしょう。いいことだと思います。
よし、来年は歌会始に出るぞ!…などと意気込んでいる時点でもうダメです(笑)。
さて、話を戻します。その大正天皇の和歌です。大正天皇自身は、歌よりも詩のほうがいいと言って憚らなかったらしいのですが、それでも500に近い歌を残しています。
今日はその中から、富士山を詠んだ歌を紹介します。
汽車中に富士を見て
ここちよく晴れたる秋の青空にいよいよはゆる富士の白雪
(大正5年)
う〜ん、これがまたなあ。どこまでも晴れわたっているではありませんか。近代天皇の歌は、どちらかというとこういう「他愛ない」ものが多いのですが、その世間的に「他愛ない」ことこそが、帝の言霊なのでしょうね。
こんなストレートな歌作れません。しかし、力がある。誰の脳裏にもこの風景は展開される。そして晴れ晴れしい気持ちに誘われる。
やたらテクニックに走り、難解を良しとする「近代」に対する一つの警告でもありましょう。
よし、やっぱり来年は挑戦するぞ。もっとゆったりとした自然な心持ちで歌を歌ってみたいと思います。
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