北島三郎『詠人(うたびと)』〜「まったり」について
文化祭の準備やら、来年度の募集活動などでてんてこ舞いしております。ま、また実写版「うる星やつら」の撮影、編集が忙しいのですが(笑)。これは私の毎年の楽しみであります。
さてさて、そんなドタバタな日々の中で、少しくらいは「まったり」したいなと思って、久しぶりにこの曲を聴きました。
「まったり」という言葉、今ではすっかり全国に定着していますが、もともとは上方言葉として使われていたようです。おそらくは「まったし(全し)」の派生語でしょうね。
完全である、安定して落ち着いているという意味の「まったし(またし)」は、語誌的になかなか面白い発展をしていますね。
「まったい」という終止形は現代に残らなかったのですが、連用形の「まったく」は副詞として、連体形の「まったき」は連体詞として、それから「まったく」のウ音便形は「まっとうだ」という形容動詞として残りました。
そして、「まったり」は今や現代生活に欠かせない副詞として大活躍しています。
「全い」が「まったり」になるのは、「浅い」が「あっさり」、「細い」が「ほっそり」になるのと同じ現象です。
つまり、「まったり」には、もともと「完全」「満ち足りている」というニュアンスがあったわけですね。
江戸時代後期の上方の用法では、「まったりと」は、やはり「深い味わいがある」「ゴージャスな」というような意味で使われているようです。
それが現代において全国的にデビューしたのは、おそらくはコミック「美味しんぼ」がきっかけでしょう。これは「味わい深い」という比喩的な意味ではなく、本物の「味」についての表現でした。「こくがあっておいしい」というような。
それがまた「穏やかにゆったりする」というような気分で使われるようなったのは、実はこの「詠人」の影響が大きいと思います。アニメ「おじゃる丸」で10年以上にわたって巷に流れ続けたのですから。
お聴きになってわかるとおり、アニメのオープニングは2番からなんですね。知りませんでした。
いかにも平安時代の貴族ののんびりした余裕ある気分を「まったり」は表しています。つまり、その当時の気分が「まったり」という言葉に乗り、そしておじゃる丸のキャラクターもそこに重なって、現代に復活したということでしょうか。
そうした「満たされた」気分というのが、現代の日本には欠けているのだとも言えるでしょうね(私ののように)。今や、まったりすることは、特別に贅沢なこととなりました。
せめて、この北島三郎さんの朗々として、かつ穏やかな歌を聴きながら、平安貴族の気分に浸ってみるのもいいでしょう。ま、実際の平安貴族はそんなに「まったり」してなかったと思いますがね(笑)。
| 固定リンク
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 最低漫画をめぐる田中圭一と岡田斗司夫の最高漫才(2025.03.17)
- 盾持人物埴輪&はにぽん(本庄市)(2025.02.20)
- 超一流はみんないい人(2024.06.04)
- 麻布十番での邂逅(2024.06.02)
- COTEN RADIOショート やなせたかし編(2024.04.15)
「グルメ・クッキング」カテゴリの記事
- げんこつハンバーグの炭焼きレストラン『さわやか』(2025.05.09)
- イットキー It's the key(玉川酒造)(2025.05.05)
- 食と五感(2025.04.16)
- スプーン&フォーク曲げ(2025.04.15)
- 天満で呑む(2025.04.12)
「音楽」カテゴリの記事
- AIで創る「新しいバロック音楽」(2025.05.14)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 『砂の小舟』 丹波哲郎 監督作品(2025.05.08)
- 『Baby, I Love You』by Suno AI v4.5(2025.05.07)
- 『Tokyo Jazz』by Suno AI v4.5(2025.05.04)
「心と体」カテゴリの記事
- 佳子さま降臨(2025.05.16)
- 天然温泉 ロテン・ガーデン(町田市)(2025.05.15)
- 完全版 『永遠の最強王者 ジャンボ鶴田』 小佐野景浩(2025.05.13)
- 『Baby, I Love You』by Suno AI v4.5(2025.05.07)
- 全日本プロレス チャンピオン・カーニバル2025 後楽園ホール大会(2025.05.06)
「文学・言語」カテゴリの記事
- 岡崎市円山の神明宮と古墳群(2025.05.24)
- 古文訳J-POP(有隣堂しか知らない世界)(2025.05.12)
- 「ドアを閉めます」(名鉄)(2025.05.10)
- 能『杜若』(2025.05.01)
- 追悼 大宮エリーさん(2025.04.28)

コメント
「まったい」という言葉が土佐弁にあります。
でも、「弱い」という意味なので、違う言葉かも…
投稿: tadataka | 2012.11.07 13:21