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2012.11.10

『NHK「100分 de 名著」ブックス ブッダ 真理のことば 』 佐々木閑 (NHK出版) 

Image ととい仏教の(超)入門書として『池上彰と考える、仏教って何ですか?』を紹介しました。
 私としてはなんとなく物足りない本でなかなか読み進めなかったと書きましたが、次に読んだこの本はそれこそ一気に数時間で読み終えてしまいました。そしてメモ多数。素晴らしい。
 筆者は『犀の角たち』の著者、科学者を目指していたのにいつの間にか仏教学者になってしまったという佐々木閑さん。
 原始仏教(釈迦の仏教)の最高経典の一つである『ダンマパダ(法句経・真理のことば)』を中心に、釈迦が説いた本当の教えに迫ります。そして、そこに「科学との共通点」を見ます。
 今、ダライ・ラマ法王が来日中で、多くの科学者と対話しているわけですが、佐々木さんの姿勢というのは、『犀の角たち』の記事で引用させていただいたとおり、必要以上には科学と仏教を結びつけていません。根本の部分、つまり、「全てを因果関係でとらえる」というところに唯一の共通点を求めています。
 そう、ご存知のとおり、本来の仏教では「超越的な絶対者」や「救済者」はいないということを前提にしています。「因」自らの心の中に求め、自らの心を変えることしか苦から逃れる方法はないと説きます。すなわちそこには「信仰」というようなものは存在しません。ただただ自己の問題なのです。
 それはある意味で非常に厳しい教えです。特に他者に救いを求める人にとっては。
 私も基本ブッダの教えが正しいと考えている(予感している)者ですが、一方で、神道やキリスト教などの勉強もちょっとしています。それらには「神」という自己を超越した存在が描かれているわけですが、それが仏教と矛盾しているとは思っていません。
 すなわち、人間の思い描く「神」(や「仏」)は、無明である我々が、釈迦の悟った崇高なる真理というゴールを目指すための比喩だととらえているのです。そういう意味では、私は「言語」や「科学」さえも、そのための比喩だと言ってしまってもいいと思っています。
 佐々木さんは「四諦八正道」の解説のところで「仏教は心の病院である」という分かりやすい比喩を使っていますが、それもまた同様ですね。
 佐々木さんは、すぐれた解釈や、科学との比較を通じて(すなわち分かりよい比喩で)、「一切皆苦」、「諸行無常」、「諸法無我」、「涅槃寂静」を解説してくれています。
 この本を読めば、私たちも仏教の真の入り口に立つことができるでしょう。もちろん仏教へのアプローチはいろいろな角度から可能です。日本人の日常的な生活に溶け込んだ仏教、すなわち大乗的な方向から近づくこともできます(私もそうでした)。しかし、やはり原点、原典に立ち返ってみることによって、慣れ親しんだ「比喩」の向こう側にある「真理」が見えてくることがあると思います。
 そうそう、この本の「比喩」ということで言えば、各所に配置されている分かりやすい表や図も、その一つでしょう。実に分かりやすい。また、認知脳科学者藤田一郎さんとの対談、巻末の読書案内も優れた比喩であり、「物語」であると思います。
P050111b 藤田さんのお話の中に出てくるカニッツァの三角形という錯視、これもまた、私たちが真理に近づくための比喩ですね。真理とは、おそらくはここに見える(見えてしまう)白い三角形のような存在なのでしょう。
 真っ白な空間には、実は無数の白い三角形が存在しています。それを見せるのが黒い模様であり、それがたとえば宗教や科学という「比喩」、「物語」、そして「(仏法僧の)法」なのでしょう。
 私の言う「モノをカタる」、「コトを窮めてモノに至る」とは、そういう意味なのです。

「愚かな者が、自分を愚かであると自覚するなら、彼はそのことによって賢者となる。愚かな者が自分を賢いと考えるなら、そういう者こそが愚か者と言われる」(「ダンマパダ」より)
 
Amazon NHK「100分 de 名著」ブックス ブッダ 真理のことば

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コメント

我が家は、日蓮宗の一派を信仰しています。しかし、私は、NHKの佐々木 閑氏の番組を見て、仏教の根本の哲学を知りました。私は、中村 元氏著の「ダンマ・パダの言葉」を読みながら、少しずつブッダという一人間が考え着いた「哲学」を我が妻と議論しあっています。しかし、我が妻は「読みかじりの知識」と言い、関心を向けません。私も母から伝えられた信仰を基に生きてきたが、佐々木氏の語る「ブッダの真理の言葉」に感銘を受けて、「世界三大宗教」の成り立ちから勉強し、仏教徒である自分の生き方を「ブッダの哲学」を基としようと思っています。「自灯明・法灯明」で良いと思います。

投稿: たばた ただし | 2013.01.17 01:50

自然や生物、宇宙や星、そのものが科学。
私はそこから学んでいるのだと、昨日、思いました。

蓮の葉を洗うのは涙か汗か
泥まみれの手に落ちる流れ星

投稿: なるこゆり | 2013.01.17 09:57

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