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2012.10.09

古楽のお話(テレマンの名曲2曲)

Imgres 日の…いや、ここのところずっと続いてますね。「時間」に関するシリーズ。
 今日も「過去」との付き合い方について書きましょう。いちおう自分のフィールドでのお話です。
 私は「古楽」というのをやっています。30年くらいやってきました。ヨーロッパの17、8世紀の音楽を、その当時の様式の楽器を使って弾いているんです。バロック・ヴァイオリンとかヴィオラとかです。
 ま、正確に言うと、その時代の日本の音楽もやってます。いちおう琴、三味線は弾けると言えば弾ける。昨日は尺八でジャズのジャムセッションに乱入して(音が出ず)笑いをとりましたっけ。
 で、なんでそういうことをするかというと、やはり、その当時の楽器(やその忠実なコピー)を使い、当時の楽譜(のコピー)を使って、当時の習慣や技法になるべく近づけて演奏するとですね、得をするんですよ。
 当時のスタイルで弾くこと自体は、もしかすると音楽の本質とは別の次元にあることかもしれません。道具や学問よりも魂で勝負しろ、というのも分かります。しかし、その魂の部分に迫るためにも、やはり「当時の〜」、つまり「昔の〜」「過去の〜」をなるべく忠実になぞった方がいいんです。
 どこかにも書きましたが、「楽器が教えてくれる」ことってたくさんあるんです。特に古いものは、近代的な意味では未発達であるがために、不自由であったり、不便であったり、しかし、だからこそその時代の人々の苦労や工夫や執念(場合によっては諦念)みたいなものが伝わってくる。
 それで、そういう道具と一体化するとですね、体が頭に何かを教えてくれるわけですよ。理屈ではないし、メソッドでもない。それが文化なのかなあ、伝統なのかなあ…とにかく、ある瞬間にふと分かるというか、分かっていることに気づく時があるのです。
 そして、昨日も書いた「守破離」ではないけれども、そこから今度は現代人である自分の感性で解釈してみると、新しい表現というのが見つかるのです。
 今の自分が過去と結婚して未来を生むって書いたじゃないですか。それですよ。やっぱり「温故知新」ですかね。
 だから古楽は面白いしやめられないのです。聴くことに関しては、バロック音楽が特別に好きなジャンルではないけれども、演奏するのは楽しい。西洋人でも、金星人…いや近世人でもないけれども、だからこそ異次元、他者と一体化する歓びがあるんです。
 というわけで、今日は古楽の隠れた名曲を2曲紹介します。バロック時代の超売れっ子作曲家テレマンの作品です。
 両者とも今は一般には使われなくなった楽器が活躍する曲です。
 まずは「ヴィオラ・ダ・ガンバと弦楽合奏のための組曲ニ長調」です。私、高校時代、この曲が大好きで
した。ガンバという、もう当時時代遅れになっていた楽器を使って、こんなに新しい響きを作ったテレマンはやっぱり天才ですよ。かっこいいフレーズが随所に出てきますね。
 ちなみにこの曲はまだ自分で演奏したことがありません。たぶん死ぬまでにはやる機会があると思いますが。
 楽譜はこちらにあります。当時の手稿譜のコピーです。便利な時代ですね。楽譜を見ながら聴いてみましょう。
 ガンバパートは基本アルト記号で書かれてますね。ああ、やっぱり普通のヴィオラで弾くことも想定してたみたいですね。そういうのもこうしてマニュスクリプトを見ると分かる。途中、写譜間違いがあるところがカワイイですね(笑)。3小節間、一段間違えて写しちゃった。あるある(笑)。

 続きましては、さらにマイナーな楽器のためのマイナーな曲。曲調もマイナー(短調)です。これは隠れた名曲中の名曲ですよ。「二つのシャリュモーと弦楽合奏のための協奏曲ニ短調」。
Images シャリュモーって、リコーダーにシングルリードをつけたような楽器です。「シャリュモー」って「チャルメラ」と同源の言葉ですね。いわゆるチャルメラはダブルリードですが、こちらは1枚。
 このシャリュモーを、あのフルートをも近代化したデンナーさんが改造して、クラリネットができたとのこと。たしかにクラリネット風の音がしますね。
 それにしてもこの曲はすごい。暗い。暗いというかテレマンにしては珍しく内省的です。3楽章なんか、あの「受難のコラール」を思わせる旋律と、ロマン派か!?というような半音的和音進行がたまりません。
 これもまた楽譜がこちらにあります。
 うわっ、これは現代にはない音部記号ですぞ。1stシャリュモーはフレンチクレフ。2ndはヘ音記号ですか?。しかし、出てくる音は1オクターヴ上ですよね。やっぱり違う楽器で演奏することも想定したのかなあ。あるいは「バス・シャリュモー」とかあったのかな。謎。
 この曲はやる機会があるかなあ…普通に考えてないだろうなあ。誰かシャリュモーやりませんか?

 というわけで、今年の秋はいつもと違って出演コンサートが全くありません。バロック・ヴァイオリンも長期貸出中です。
 そろそろウズウズしてきたかも。

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