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2012.10.07

アーティスト・ドキュメント 『藤巻亮太 レミオロメン活動休止からソロへ』 (NHK BSプレミアム)

20121008_94132 こまで核心に迫れたか。いや、迫りすぎてはいけないのだろうか。
 芸術家にとっての活動スタイルの変更というのは、たいがいが「慣れ」に対する抵抗、そしてある種の商業主義からの脱却という意味合いが大きいと思います。
 藤巻くんもおそらくはそうした「普通」の旅路を歩んでいるものと見えます。ですから、彼が10年続けてきた、いや小学校時代から続けてきたとも言える「レミオロメン」という「お友達」関係を、一度振り払ったことは、私にとってはある意味自然な流れでした。
 もちろん、デビュー以来ずっと応援してきたバンドが活動休止になるということは残念でしたが、私くらいの年になると、あらゆる分野でそういうことを体験してきているので、単なる哀しみや落胆ではなく、(再結成も含めて)明るい未来への道程であるととらえることができるようになります。
 そういう意味で、今日のこの番組で語られたことは、ほとんど想定内であったとも言えます。藤巻亮太自身の物語というよりも、アーティスト、ミュージシャンとしての普遍的、一般的な物語と感じられました。
 他生のご縁か、間接的ではありますが、彼の人間性や音楽観、世界観に触れる機会があった私としては、そういう想定の奥にある、彼自身の「そこ」に至ったきっかけを知りたいような気がしました。
 安定していたとも言える一連のバンド活動の歴史の中に、私生活の変化、他のアーティストとの出会い、志村正彦くんの死、そして震災というような、その「安定」や「心地よさ」を揺るがす事件が、運命的な意味合いで連続し、彼の「心」ではなく「魂」を動かすことになったと思うからです。
 特に私は、志村くんの死が一つのターニングポイントになったと感じます。こちらに書いたように、藤巻くん自身もそれについて、音楽家として作品を絞り出すことによって一つの答えを出そうと努力していました。
 フジファブリックの場合は、(結成当時は別として)もともとが「志村正彦と職人集団」でしたから、志村くんが今回の藤巻くんのような心境になった時、バンドとしてCHRONICLEのような「ソロ」アルバムを作ることができました。
 しかし、レミオロメンは違った。いくらそれぞれがプロ意識に徹しようと、やはり幼馴染みバンドであって、本当に一人になることはできなかった。想像すれば分かりますよね。だから、解散する必要はなかったけれども、活動休止にする必要はあった。
20121008_110018 藤巻くんがソロ活動を始めて、まだ数曲しか私は聴いていませんが、ある意味では彼もご多分にもれず、内側に向かう音楽を作ろうとしていると感じます。
 ええと、そうですね、たとえばこちらに吉井和哉さんのソロ活動について書きましたけれども、やはり、藤巻くんも「短調」で「単調(悪い意味ではなくシンプルということ)」な音楽を指向していくと思います。
 そこで、どこまで自分の魂と向かい合えるか。どこまで深く入り込んでいけるか。その作業に何年を要するのか。
 ビートルズは、バンドとしてあまりに世界を変えてしまったため、その分、それぞれのソロ期間が膨大に必要でした。その結果、結局再結成はなかった。
 志村くんは、あの「ソロアルバム」を作ったあと、再び他力を重視した、たとえばTEENAGERのような方向に舵を取るつもりだったと思います。つまりバンドに帰っていくつもりだった。
 しかし、その「ソロアルバム」で、あまりに命懸けの作業をしてしまい、結果として再結成はなくなってしまいました。
 そういう志村くんの姿と音楽に触れた藤巻くんの魂の揺れは想像に難くありません。
 もちろん、それだけではないと思いますが、たとえばそのような、誰かとの奥深い部分での魂の共鳴がなければ、このような大きな決断に至らなかったでしょう。ただ、音楽への誠意だけではないと思うのです。
 いずれにせよ、藤巻くんが、他の二人のメンバーと比べて、多少「宗教的」な素質を持っていると感じるのはたしかであり、その次元での行き違いがあってもおかしくなかったと思います。いや、他の二人より次元が高かったという話ではありませんよ。高い低いではない。ステージの種類が違うということです。
 逆に言えば、最終的に藤巻くんは、元のステージに帰ってこなければなりません。音楽とは決して自己満足や自己研鑚の道具ではなく、あくまで「つなぐもの(エンターテインメント)」だということです。
 これからの彼の活動に注目し、そして期待したいと思います。とりあえず、明るく元気な姿を見ることができて、ちょっと安心しました。
 彼はきっと一回り大きくなって戻ってくると思います。

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コメント

お久しぶりです。
密かにしかし、いつも楽しく拝見してます。安倍さんの回は夫婦で鳥肌たちました。
藤巻くんの番組、さほど新しい情報はなく、無難な内容でしたね。もう少し突っ込んだ内容かなと期待していましたが。ウーロンらしい。
冒頭、手作りのお弁当には泣けました。アイスランドで犬を眺める瞳にもプチ萌。
悩む藤巻くんは懐かしく、らしいな、と思います。
番組最後の渋谷公会堂ライブは今回参戦できました。昔なら取れたことない二列目が当たり、やや複雑。しかししっかり弾けてきました。やりたいことしかやらないぞ!という意気込みは伝わりました。番組で舞台からハケる藤巻くんの画面にレミ友と映り込んでいて嬉しかったです。今回、男性客が多かったのも印象的でした。
難しいでしょうが、営業に振り回されず、自分にしかできない音を鳴らしていってほしいです。
ゆっくり活動ペースが今の私にはありがたいのです。

投稿: くぅた | 2012.10.09 15:02

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