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2012.09.30

『指揮者の知恵』 藤野栄介 (学研新書)

05404701 常に示唆に富む本。音楽に携わっている人間のみならず、多くの方に読んでいただきたい。
 8月、安倍晋三さんのお話を聞いた日に演奏を聴き、ほんの少しですがお話をさせていただいた指揮者の藤野栄介さんの著書です。
 本当にあの日は様々な一期一会がありました。こういうとなんですが、霊的な邂逅というか、なかなか言葉や理屈では説明できない「予感」を多く抱くことができた一日でした。
 おととい、「時間は未来から過去へと流れている」という記事を書きました。あの日の「予感」というのも、そういった時間軸内で起きる現象(実感)だと思います。
 仏教的に言えば、未来に「因」の存在を予感し、そのために自らの行動が変わって「縁」を生み、実際に「果」となるということでしょうか。
 そういう意味では、藤野さんにもある種の「予感」を抱いたと言えます。当日奏でられた音楽への共感はもちろん、彼が王仁三郎に興味を持っているということにも当然共感いたしました。
 考えてみれば、音楽という芸術の存在自体、時空を超えた霊的な現象ですし、指揮という行為も、無から有を生み出す、それも未来の完成像を想像しつつ現在の刹那を創造していくという、ある種霊的なものです。少なくとも「科学」や「技術」の領域ではないことは、この本でも繰り返されていますね。
 私もいちおういくつかのオーケストラのメンバーとして演奏する演奏家でもあり、また、本当にたまにですが、指揮のまねごとをしたり、あるいはバンドのリーダーとして演奏を引っ張ったり、また、クラブ活動では学生の弦楽オーケストラを指導する立場であります。
 ですから、藤野さんの一つ一つの言葉に、深く頷くことができましたし、あるいは実感を言語化していただくことによって新たな発見もさせていただきました。
 しかし、ここに書かれていることは、音楽のみならず、本当に多くの分野に、いや人生全体にも当てはまることばかりですね。
 特に人間相手の仕事というのは、基本そのように「霊的(非科学的)」なものなのです。教育ももちろんそうです。技術やマニュアルも必要だけれども、それだけではどうしようもない。
 藤野さんは指揮という仕事について「演奏家の中にある音楽に対する誠実さを引き出す」という表現をされていますが、これはあらゆるプロデューサー、ディレクター的な仕事に共通している大切な目的です。私たち教師も常にそこを意識しなければなりません。人間の中にある人生に対する誠実さを引き出す。
 そして、最後のページに書かれていたことは、人生論や芸術論を超えて、もっともっと普遍的な一種の哲学、宗教論のようでした。私は非常に強く共感し首肯しました。

「不完全さの中にこそ自分の使命があることを理解する」
「世界が常に不完全であることに感謝する」

 近いうちに藤野さんと再会し、いろいろとお話をしようと思います。素晴らしい本をありがとうございました。

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