『日本人の誇り』 藤原正彦 (文春文庫)
今日は満州事変の端緒となった柳条湖事件が起きた日。中国にとっては「国辱記念日」です。
毎年この日になる反日デモが活発になります。今年は特にかしましい。ご存知のとおり、尖閣の一件のおかげですね。ああまたかという感じです。
この「ああまたか」が始まってそろそろ一世紀になるでしょうか。先方がそういう作法の国だということを、そろそろ日本もしっかり学ばなければなりませんね。
それを学ぶ「教科書」として優れているのがこの本です。
先日、知り合いから「南京」のことを学ぶのにどんな本を読んだらいいかという質問を受け、あえてこの本を推薦しました。
学校の「教科書」や世間一般の常識とこの本での常識とでバランスを取ると、ちょうどいいかなと思ったからです。
柳条湖事件についても、なかなか興味深い記述がありますよ。日本にもいろいろ事情があったわけだし、帝国主義真っ盛りの当時としては、別に特別な行動、事件ではなかったと。
藤原さんの歴史観は、日本人としては実に正当で穏当なものだと思います。アメリカやソ連(ロシア)を断罪し、中国や韓国(朝鮮)をさげすむというのは、戦後政治や戦後教育の裏返しとして、つまり、戦勝国とそれに伴う独立国から押し付けられた歴史観に反対するものとして、当然考えうることです。
私たちが「日本人の誇り」を考える時、藤原さんの指摘するような、アメリカや中国や韓国の「誇り」を知ることは大切ですね。つまり、現在の日本人の思想と行動から、アメリカや中国や韓国の意図を引き算することによって、純粋な「日本人」や「日本」というのを想定することができると思うのです。
そういう意味で、こういう保守側の視点というのは有用な情報になります。戦勝国や戦敗国や、その他帝国主義や植民地支配されたそれぞれの国の価値観の押し付け合いではなく、冷静に各国の立場と歴史と性質をとらえることこそ、今後重要になってくるでしょう。
藤原さんは、アメリカやロシア、中国の特性を暴くとともに、日本の弱点をもしっかり指摘しています。お人好しで弱腰なところや、責任の所在が曖昧な点、謙虚すぎる点などです。
「自虐」というのもある意味日本人の「性質」なのでしょうね。けっこうドMなのかもしれません(笑)。あるいは日本のマンガやアニメに見られるような悪者に対するシンパシーというものの裏返しとして、加害者、悪者気分に酔っているかもしれません。そういう願望があるんでしょうかね。ジャイアン願望というかバイキンマン願望というか。
私も最近になって、自分の受けてきた教育、自分の施してきた教育における、アメリカ(GHQ)によるWGIP(罪意識扶植計画)の影響に興味を持ち、自分の得意分野である国語科を中心に研究をしていますが、これがなかなか複雑で難しい(面白い)のです。
単純にアメリカに我々が洗脳されているともいいきれない部分もあるんですよね。ある意味ではアメリカの想定通りに行かなかったところもある。そこにこそ私は「日本的」「日本人的」な性質を見ています(詳しくはまたいつか書きます)。
そのような自分の研究にとって、この本で最も有用だったのは、「過去の出来事を、当時の視点でなく、現代の視点で批判したり否定したりするのは無意味なことです」という言葉でしょう。これは肝に銘じて、研究、教育していきたいと思いました。
「日本人の誇り」…それは一体何なのか。そして、これから世界で日本人はどう行動すべきなのか、その探求こそ、私の残された人生の課題になりそうです。
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