「顔見知り」と「人見知り」
↓イメージですw
皆さん、「顔見知り」と「人見知り」いう言葉もちろん知ってますよね。この二つの言葉、並べてみると面白いというか変じゃないですか。
そう、「顔見知り」は人と親しい感じがしますが、「人見知り」は逆に親しくない感じがします。
「顔」と「人」が入れ替わるだけで、なんで反対のイメージになってしまうのか…いや、実は反対ではないのかも。
今日は軽くその辺について解説したいと思います。
まず知っておきたいのは、この二つの言葉は比較的最近使われ出した言葉だということです。つまり、古語の世界では名詞としては用いられていないということです。
具体的には「人見知り(する)」は江戸時代から、「顔見知り」は明治時代からです。ある意味意外ですね。
「人見知り」に関しては、最近では「人見知りだ」「人見知りな性格」などのように、形容動詞としても使われ始めています。
この事実は、「人見知り」が「人+見知り」という意識が薄れ、「ヒトミシリ」全体でのイメージが固定化したことを表しています。
ということで、「人見知り」の話になってしまったので、そちらから説明しましょう。
この言葉の語源について、ネット上では「人見(外から見た印象)+知り」だなどというナンセンスな解説がされているところもありますが、これは間違いです。あくまで「人+見知り」です。
「見知る」という言葉は古くから使われていました。なにしろ古事記にも出てきますから、これは古いですよ。意味は「見て知る」「見て分かる」「面識がある。また、親しくつき合っている。交際してよく知る。その人の性質や性格を知る」です。
ですから、「人(を)見知る」というと、「人を見て誰かわかる」とか「その人のことをよく知っている」という意味になるわけですね。実際、そういう表現は古語の世界でも見つけることができます。
では、それがなぜ「親しくない」「親しまない」イメージの名詞になってしまったのでしょうか。
もうお分かりの方もいらっしゃることでしょう。そう、もともと「人見知り」という名詞は、赤ちゃんに対して使われていたようなんですね。「人見知りが始まる」という表現をするじゃないですか。
つまり、子どもの生育過程の中で、母親を母親として認識し、その他の人をその他の人として認識するということです。言い方を変えると、「味方と敵を見分ける」ということです。
人見知りを始めるというのは、人を見て味方か敵か知るということなんですね。「その人のことをよく知っている」からこそ、敵か味方か判断できるわけですから。
それを大人の世界にまで援用して、さらに結果だけを取り上げて「特定の人とは交われるが特定の人ととは交われない」という意味で使うようになってしまったというわけです。
そういう意味では、大人が「私、人見知りが激しいんで」と言うのは、「私、(赤ちゃんの時始まった)人見知りがまだ色濃く続いている」ということになりますかな(笑)。ま、間違いではないか。
一方、「顔見知り」は、これまたよく考えると面白い言葉です。もともと「見知る」自体が「面識がある」という意味を持っていますから、そこに「顔」をつけるとどういうニュアンスになるかというのが問題です。
私は、この「顔」には限定的な意味合いを感じますね。つまり、「顔見知り」とには「顔は知っているが、そこまで親しくはない」というニュアンスが含まれているような気がするのです。いかがでしょうか。
「顔見知りの犯行」とか言うじゃないですか。「友人の犯行」とは言いません。だいたいが害を及ぼすような人は友人ではありませんからね。そういうやや冷めた距離感がある。
こうして考察してみますと、「顔見知り」も「人見知り」も実はそうしたマイナスのニュアンスを内包した言葉だという共通点があると捉えることもできるようになりますね。
「人見知り」する対象は、ある意味では「顔見知り」であるとも言えます。つまり、顔を見て敵(味方ではない)と判断するわけですから、その相手とは「顔見知り」でしかないとも言えるというわけです。
うん、面白いな、言葉は。
と、そんなわけで、私はなるべく「人見知り」をせず、単なる「顔見知り」に終わらないように、その人たちと深くつきあって行きたいと思います。そう、最近多いんですよね。敵だと思っていた人と飲んだら、とってもいい人だったことに気づくだけでなく、共通点もたくさんあったりして、案外意気投合しちゃうことが。
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