いじめ問題親子討論会
今日は我が中学校のオープンスクール。恒例となりました親子討論会をしました。
1年生は「親の願い、子の願い」というテーマで討論。普段なかなか言えない、あるいは感情的になってケンカになってしまうようなお互いの心のうちを冷静に語り合う機会としました。
今年もまた涙あり笑いありの大変充実した会になりました。何が飛び出すか分かりませんが、それが面白い。こういう親子のバトルができる学校であるということを、外部の方にもアピールできたと思います。
2・3年生は「いじめ問題」について親子で討論しました。こちらもいかにも本校らしい内容だったと思います。
会に先立って私は「いじめをなくそう」「いじめはいけない」「いじめゼロ」「いじめられている人の気持ちになってみよう」「いじめを見たら止めよう」はあえて禁句としました。世間一般の結論は全てダメということです。
そう、私は世間のいじめに対する感覚と対処は大いに間違っていると考えているのです。
「いじめをなくそう」でいじめがなくなるなら、とっくになくなっているはずです。しかし、大人の社会も含めて世界中でいじめはなくなっていません。実はそこに終始するからいじめはなくならないのです。
いじめの加害者に「いじめられている人の気持ちになってみろ!」というのもチャンチャラおかしい。言葉のイメージに酔わず、ちょっと考えてみれば分かるでしょう。いじめている人はいじめられている人の気持ちが分かっているからいじめるのです。相手の一番嫌がることをやっているのですから。いじめられている人の気持ちを一番理解しているのは、いじめている人なのです。
「いじめを見たら止めよう」というのは、ある意味最も暴力的な言葉だと思います。これは絶対に強要してはいけません。自分を守るために「見て見ぬふり」をする権利は全ての人間にあります。その選択肢を奪うことに私は反対です。
たぶん、世間一般の学校で、親子でいじめについて話し合うと、「いじめをなくそう」「いじめを見たら止めよう」ということを決議して、表面的に安心して終わることでしょう。
そんな何の解決にもならないことにはしたくありませんでした。
結果として、今日の討論会は素晴らしく充実したものとなったと思います。
「いじめの定義」「いじめる側の気持ち・論理」「いじめられる側にある原因」「いじめを目撃した時どうするか」「いじめられた時自殺しないために身につけるべき強さとは」「いじめはなくなるか」…。
ある意味、教室ではタブーとされる本音が続出しました。たとえば、生徒が挙手して、親や先生の前で堂々と「いじめを目撃したとして、そのいじめられている子が自分の嫌いな子だったら、いじめに加担する」と正直に言える学校があるでしょうか。
ちなみに40人中「助ける」は3人。誰かに相談するも3人。加担するが2人、その他は見て見ぬふりでした。
「いじめたくなる気持ち」や「いじめられる原因」という部分でもたくさんの意見や具体例が出ました。
そして「いじめはなくなるか」という問いに対しては全員が「なくならない」と。
これが現実でしょう。私の予想どおりです。この現実から出発でいいのです。そこを直視せず、善悪二元論に終始し、ただ偽善的なスローガンで満足しているから、根本的な解決にならないのです。
私は最後のまとめでこういう話をしました。
「誰もが、いじめる種、いじめられる種、いじめを見て見ぬふりする種を持っている。その事実に気づき、その種が発芽して生長して悪の花を咲かせないようにすることこそ重要」
これは実は戦争の問題ともリンクしています。「戦争反対」「戦争をなくそう」と言っても、戦争はなくなりません。誰もが戦争に加担する種(可能性)を持っていることを直視し、それと戦わなくてはならない。いじめ問題も戦争や紛争の問題も、他人事ではなくまさに自分自身の問題の集合体なのです。
いじめに関しては、論議の土台として、「いじめ」という言葉で全てを乱暴にくくってしまうことの問題もありますが、中学生にはそこは難しいかなと思い、今回はスルーしました。高校生くらいなら、そこを話し合ってもいいかもしれませんね。というか、大人、特に教員はそこから始めなければならないのに、どうもそれさえもなされていないように感じるのは私だけでしょうか。
本校の裏スローガンである「死なない力を身につける」という意味でも、今日の討論会は実に有意義であったと思います。地震が来ても、富士山が噴火しても、いじめられても、経済が破綻しても、戦争が起きても、やっぱり死んではいけない。
「いじめはなくならないが減らすことはできる」…生徒の一人がそう発言しました。これは上記の様々なピンチにも当てはまりますね。
「生きる力=死なない力」を身につけるべく、今後とも生徒、保護者、教員が一体となり、勉強し、体験し、話し合って行きたいと思います。
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コメント
いつも拝見させて頂いてます。(横田めぐみさん関連の記事で、多分同い年だと思われます(笑))
今回のいじめについて、とても共感しました。是非拙ブログに転載させて頂きたく、宜しく御了解願います(勿論、リンク先URLは提示致します)。
これからも色々教えて頂ければ幸甚です。
投稿: yuki(柳下裕紀) | 2012.09.20 17:55
yukiさん、ありがとうございます。
転載もちろんどうぞ!
こちらこそよろしくお願いします。
投稿: 蘊恥庵庵主 | 2012.09.20 18:22