うるう秒…「閏」とは
たしかに今日はなんとなく一日が長かったような(笑)。
皆さんは午前8時59分60秒をどのように過ごされましたか。私はすっかり忘れていました。
写真は電波時計の送信所のある福島県田村市のモニュメントです。
おおたかどや山標準電波送信所がある福島県田村市と川内村は、福島第一原発事故によって最近まで警戒区域となっていました。なんとも皮肉なことです。
というのは、この標準時間は原子時計によって決められているからです。それもセシウムの遷移の際発する電磁波(放射線)の周期を基準としています。まあ偶然とは言え、よりによって…ですよね。
ところで、この「うるう秒」とか「うるう年」とか言う時の「うるう」って何だかご存知ですか。
今日はその話をしましょう。
まずは漢字の説明から。なぜなら、この「閏」の発想は中国から渡来したものだからです。
中国でも日本でも、昔は太陰太陽暦を使っていました。すなわち月の満ち欠けで日付を決め、天文時との誤差は閏月を挿入することよって修正するというやり方です。
つまり、昔は時々1年が13ヶ月になっていたんですね。同じ月を二度繰り返す。たとえば本来の五月の次にもう一度五月を繰り返す、その二度目の五月を「うるう五月」と呼んでいた。
で、そういうのを中国では「閏」という字で表現していたんですね。日本語の音読みで言うなら「ジュン」ですね。中国でも日本でも「閏月」には王様が門の中にいるので「閏」という字が生まれたという俗説が一般化しています。
しかし、そのような歴史的な事実は確認されていないということでして、俗説は俗説、やはり怪しいみたいです。
では、どういうことかというと、どうも本来は「門」の中に「壬」という字だったらしいのですね。音からして「王」ではなく「壬」ではないかと。
「壬」という字はもともと真ん中の横棒が長く、つまり、中央が豊かに膨らんでいる様子を表した文字でして、それでひと月増えるイメージを「閏」という漢字で表したのだと想像されます。日本でも上の画像のように書く人がけっこういるらしい。
そこで面白いのは「うるう年には子どもができやすい」という言い伝えがあるということですね。これは日本各地で言われていることです。科学的な根拠はない…一日多いから当然統計的出産数が増えるとも言えますが…のに、そういうことが言われるのは、おそらく「壬」の本来のイメージが潜在的にあるからでしょう。
そう、「妊娠」の「妊」も「壬」が付きますよね。女の人のお腹が大きくふくらんだイメージです。その辺との関係で、「閏年」には「妊娠」が増えるということになったのではないでしょうか。
さて、漢字はそれでいいとして、なんで日本で「閏」を「うるう(うるふ)」と読むようになったかということです。
「うるう(うるふ)」という日本語の語源ですが、なんとなくイメージできるかと思いますよね。そう、この「うるう」は「うるおう」や「ウルウル」と同源なんです。水が満ちている、溢れているという感じですね。
日本語の「うるふ」という動詞は、「うるほふ」と並行して古くから使われていました。ともに「水分を含む」「豊かになる」「恩恵をこうむる」というような意味です。漢字をあてる場合は「水」をイメージしてか、さんずいを付け「潤」とすることが多かったようでね。
そんな日常語の影響を受けてでしょうか、「閏」という字にも「うるふ」という訓みを与えたという事情があるようです。ですから「うるう年」というのは「潤う年」、「うるう秒」は「豊かに膨らんだ秒」というような意味合いになるということです。
ところで、この「うるう秒」、電子機器等にとっていろいろと面倒なことが起きるという理由からか、廃止の方向で検討されているということです。
まあ、今後地球の自転がどう変化するかは全く予想できないんですがね。たぶん早くなることはないと思いますが、遅くなる程度というのは予想不可能です。昨年の大地震でもほんの少し遅くなったらしいですし、温暖化や寒冷化で、地球表面の気体、液体、固体の割合が変わるだけでも微妙に変化しそうです。
いずれにしても、これからどんどん時間が「うるう(潤う)」と思えば、なんとなく得するような気もして来ますね。
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