『世界の陰謀論を読み解く―ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ』 辻 隆太朗 (講談社現代新書)
陰謀論は好きです。もちろん信じているわけではありません。「物語論」として非常に興味深いのです。
一般的な神話と対称をなしているというか、神話とペアリングして読み解くと世界が見えてくる場合もあります。私の頭の中ではそういう対置がなされているわけです。
この本はそうしたパラレルワールドとしての陰謀論、特に「ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ」という三位一体に関する概説書としては、なかなかよくできています。実際よい復習用の教材となりました。
それにしても面白いですね。陰謀とは陰の謀(はかりごと)ですよね。だのに、こんなにおおっぴらになっている。同様に秘密結社も全然秘密じゃない。
つまり、こうして公になっている陰謀や秘密は、全然陰謀や秘密ではなく単なる物語であるわけです。
ここでまたワタクシの「モノ・コト論」が登場させましょう。いつも言っているように、「モノ」とは「未知・自然・不随意・想定外・外部」を表す日本語です。それに対し「コト」は「既知・論理・随意・想定内・内部」を表します。「モノ」を「コト」に変える行為を「カタる」と言います。「カタ」と「コト」は同源です。ちなみに「コトの葉」は「カタる」道具です。
いわゆる陰謀論も、まさに「モノ」を「コトの葉」で「カタる」ことによって「コト」化した産物と言えましょう。未知に対する不安や恐怖を、安心や納得に変える知恵なのです。
さらに面白いのは、陰謀論が不安や恐怖を払拭するだけでなく、さらに積極的な効果を生むことです。すなわち、その陰謀論に対峙する自分を、陰謀論を退治する自分に変身させる力があるのです。
自分だけがその陰謀を知っている、そして、この陰謀の主体たる巨大な暗黒組織をぶっ潰すのはもしかして自分なのではないかと、そういう幻想を抱かせるのが陰謀論の特徴ですね。
この本にもありましたが、これは少年の好むヒーロー物の構造とよく似ている、というか同一のものですね。
そういう意味では、私は少年時代から今まで、ヒーローの立場に自分を置いて世界を解釈し、自らの生きがいを創造してきたと言えなくもありません。
うん、そうだな。最近でも某宗教団体や某組合や某運動組織を仮想敵国として、一人ヒーロー気取りで悦に入っているもんな(笑)。
しかし面白いもので、そういう仮想敵国の国民と胸襟を開いて語り合うとですね、敵どころか異常に仲良くなってしまったりするんですね。そうすると、ずいぶんと自分勝手ではありますが、なんとなくつまらなくもなってしまう。
その点、「ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ」なんていう大御所になると、いくらその核心に迫ろうとしても全く近づくことができないどころか、その存在すら確信できないんですよね。だから、これほどまでに長く深く世界に根付いているのでしょう。つまり、それほどにフィクション度の高い物語なわけです、陰謀論というのは。
今、私は、世界の、いや私の「陰謀論好み」が何に起因するのか、とっても興味があるんですね。だから、この本も読んでみたわけです。
もしかすると、陰謀論に興味を持たせるのもまた誰かの陰謀なのかもしれないし、そんなふうに思うのも誰かの陰謀に乗っかってるのかもしれない…なんて考えていくと、この世の中はまさに陰謀のパラレルワールドということになりそうですね。それはそれで面白いかもしれない…いや、この世の中をそんなふうに解釈するのも誰かの陰謀かも…いや、自分の陰謀なのかもしれませんね(笑)。
というわけで、私は「陰謀論」を排除しようとは思いません。また全てを楽しもうとも思いません。あくまで「物語」としての質を問いたい。つまり、よくできたお話なのか、どこまでリアルなのか、普遍性があるのか、あるいは時代性があるのか、それを見極めていきたいと思います。
その点、最近一部ではやった(まだはやっている?)「3.11人工地震説」なんか、全く興味感情移入できません。程度が低すぎます。
逆に、ヒッグス粒子の発見なんか、なかなかよく出来た物語ですね(笑)。
Amazon 世界の陰謀論を読み解く
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