『富士百景(THE PICTURESQUE MOUNT FUJI)』 今尾掬翠
デジタル技術の恩恵はいろいろなところに感じられますが、各大学や図書館のデジタル・アーカイヴはその最たるものの一つでしょう。
私もいろいろな分野で有効利用させていただいています。特に音楽と文学の分野。
音楽では楽譜ですね。クラシック系の楽譜はほとんどこちらで手に入る。最近200万冊を超えたとの告知がありました。昔、数千円はたいて買っていたようなものが、無料で手に入るのですから、なんだか申し訳ないような気さえしますね。きっと商売上がったりの方もいらっしゃるでしょう。
前も書いたとおり、こうしたデジタルデータとA3(折りたたんでA4)クラスの大きさのタブレット端末があれば楽譜の管理や持ち運び(ついでに譜めくり)が俄然楽になりますね、たぶん。
文学や歴史の研究の面でも、様々な貴重書を読むことができる。まあ、もう少し著作権が緩くなって、国会図書館のアーカイヴがもっとネットで閲覧できるようになればいいなあ…。特に古いもの。とっくに著作権が切れているだろうに、法的なプロセスが面倒なのか、見ることができないものが多すぎます。
まあそれでもずいぶんありがたい時代になったと思いますよ。今日紹介するものも、昔、古本屋さんで3万円出して買おうかと思っていたものです。それが無料で見られる。
これはちょうど100年前1912年(明治45年・大正元年)に出版された富士山の写真集です。発行月の6月だし、本当にちょうど1世紀前ですね。
外国人にも見てもらおうということか、あるいは実際に外国での需要が多かったのか、英語の解説なども付されています。
最も古い富士山の写真集なのかどうかは調べてないので分かりません。たぶん、もっと前からあったと思いますが。どうなんでしょうか。
ところで最近、富士山の噴火の可能性が注目され、まるで一つのブームのようになっていますね。まあ、そんなに簡単に富士山は噴火しませんよ。富士山に住む者として、自衛の意味でいろいろなデータの計測をしております。国の観測機器のデータもそれこそネットで見られますから、それと個人的な計測データも合わせて、噴火や地震を予測しています。たぶん大丈夫でしょう。ダメな時はダメでしかたないし。
で、とにかく富士山というのは明治の頃からそんなに大きくデザインを変えていません。ですから、この写真集には、そのへんの変化、つまり富士山の経年変化のデータとしての価値は期待していません。
それよりもですね、その富士山を背景とした、この富士山周辺の町(村)や自然の様子を見たいんですよね。それは富士山は違って、この1世紀の間に人や街や自然は大きく変化しましたからね。
1枚見てみましょうか。これは「吉田月光寺附近より見たる富士」と題された写真。ちなみに「月光寺」は間違いで「月江寺」です。ウチの学校の母体となっているお寺ですね。英語表記も間違っている。「Gakkou-Temple」じゃなくて「Gekkou」ですよ。他にもけっこう間違いが目立ちます。「明見湖」が「Akemi-Lake」になってたり。「Asumi」ですよ。ま、両方とも今でもよく間違われるのですが。その他にも新倉山が朝倉山になってたり。
まあ、とにかく見てみましょう。
うむ、これはどの辺かなあ。宮川沿いですから、それこそ今の私の職場の近くでしょうか。こんな風景だったんですね。
百景とありますが、全部で101枚の写真が収載されています。それぞれどこから撮影したものか、現在の様子と比較しながら比定して歩くのも面白いかもしれませんね。
101枚の写真のあと、富士山についての概説が付いております。これが私にとってはありがたい。地学的な話はほとんどなく、文学面からの解説になっています。私も知らなかった詩歌が載っていたり、あるいは謡曲「富士」が長々と引用されていたり、徐福伝説に触れられていたり、明治天皇・皇后御製が紹介されていたり、なかなか興味深いものになっています。
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