メレンゲ 『ミュージックシーン』
名作登場。気持ち良く、そして切なくローテーションしています。
昨日、今日(ロックの日)と仕事で富士吉田と御坂を往復しました。その間ずっと聴いていました。
「ミュージックシーン」…音楽の風景ということなのでしょうね。私には富士吉田と御坂の風景が実にこの音楽にマッチしているように感じられました。
富士吉田と言えばクボケンジくんの親友だった志村正彦くん、御坂と言えばレミオロメンですね(ちなみにその中間の峠にいたのは吉井和哉さん)。
山梨の陰陽を象徴してなぜか私の中で一体でもあったフジとレミオ。今、志村くん率いるフジファブリックも、レミオも聴くことができなくなっています。
その理由はやはり志村くんの不在にあります。フジは言うまでもなく、レミオの活動停止の遠因もそこにあると言っていいかもしれません。志村くんと藤巻くんの関係についてはこちらに書きました。
そんなことを思い、このアルバムを聴きながら御坂峠を越えると、本当に不思議とまた、フジファブリックとレミオロメンが私の中で一つに融合していく気がしたのです。
そのへんのミュージシャンどうしの葛藤や苦悩、そして互いのインスパイアやインフルエンスについては、今回このアルバムで重要な役割を果たしている皆川真人さんがよくお分かりだと思います。
そう、単純に、音楽的にも、このメレンゲにはフジとレミオの要素がふんだんに盛り込まれています。それを実現したのは皆川さんの力による部分が大きい。
クボくんには、言うまでもなく、志村くんの存在が消えず残っています。いや、逆に言えば、志村くんも非常に大きな影響をクボくんから受けていたことに気づきますね。
まさにそれは「うつし絵」なのかもしれません。志村くんも感動した(あるいは嫉妬した?)圧倒的な名曲「うつし絵」が、やはりこのアルバムの中心にあることに大きな意味があると感じます。日本ロック史に残る1曲ですね。
今聴くと、志村くんのことを歌った歌のようにさえ感じます(もちろん作られたのは志村くんが亡くなる前ですし、作詞はクボくんではありませんが)。しかし、よく出来た曲ですね。志村くんもそうだけれど、女の人に提供する曲というのは特別な力を持ちます(その仕組みよく分かります…笑)。
もうフジファブリックファンの方ならよくお分かりになると思いますが、アルバムの中に何曲もいかにも志村くんが書きそうな曲、詩がいくつかありますよね。あるいは歌声や歌い方にも彼を感じる部分がありますでしょう(特にファルセットではぞっとしてしまいました)。また、皆川さんのキーボードが金澤くんのそれに、あるいはギターのフレーズが総くんのそれに似ている瞬間もあったりして。
クボくんや他のメンバーはこういう聞かれ方を好まないかもしれませんが、私は音楽の本質はまさに「うつし絵」だと信じているので、決して間違った音楽の受け取り方ではないと思います。
いかなるバンドにもそのベースとなる邂逅、そして模倣(意識的であれ無意識的であれ)があるものです。そういう意味ではここでメレンゲが皆川さんとずっしり仕事をするようになったのも大きな出会いでしょうね。
そう、いかにもな皆川節、代替コードの使い方、ピアノの音色やストリングスのアレンジ、特にイントロの磨き方ですかね、そういうところにレミオロメンっぽさを感じる人も多いことでしょう。
たとえばそういう部分に、今までのメレンゲらしさが感じられなくなったと言う人もいるでしょうね。
しかし、音楽における「うつし絵」的な要素とは、まさにそこに現れる「アナロジー」の魅力であるはずです。つまり、デジタル的なコピーではなく、逆にそこに表れる、あるいは抽出される、それぞれの個性が
結局はオリジナリティーになっていくいうことです。
そういう意味で、今回のメレンゲのアルバムは今まで以上にメレンゲの、特にクボくんの本質的な魅力が感じられました。メレンゲの新たな境地という言い方もできると思いますが、それ以上に彼らを彼らの目指すべき地点に近づけた作品であると思います。
決して新しいというか変わったことはしてません。ある意味王道な曲の作り方であり、たとえばコード進行や構成はすべて私の知っている範囲内です。しかし、そうした過去の遺産の上に、あれだけ魅力的な「メロディー」を乗せられる人はそうそういないでしょう。クボくんは志村くんや藤巻くんほど、非和声音は使いません。それなのに既視感なく新鮮に響かせられるのは、彼の持って生まれた才能のなせる業でありましょう。
これは蛇足かもしれませんけれども、志村くんもこういうポップで(無理にひねらず)切ないアルバムを作りたかったのかなとも感じました。勝手な想像なのですが。なんとなくそういう気がしました。
70年代後半から80年代にかけてのキーボード(シンセ)文化、あるはストリングスアレンジ文化で育った私という意味でも、このアルバムは耳にしっくりなじみます。これからもたくさん聴きこんで、彼らのアナロジーとオリジナリティーを聴きとっていきたいと思います。
いずれライヴにも参戦してみようかな。最近ロックのライヴから離れているし。ツアーのスケジュールを確認してみましょう。
Amazon ミュージックシーン
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 『曼荼羅』 石堂淑朗 脚本・実相寺昭雄 監督・冬木透 音楽作品(2021.02.28)
- 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品(2021.02.27)
- ヴィヴァルディ? 『チェロ協奏曲ト長調 RV 415』(2021.02.21)
- 『レモンのような女 第2話 私は私―アクチュアルな女―より』 実相寺昭雄監督・岸恵子主演作品(2021.02.20)
- 『ダンとアンヌとウルトラセブン』 森次晃嗣・ひし美ゆり子 (小学館)(2021.02.18)
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 『曼荼羅』 石堂淑朗 脚本・実相寺昭雄 監督・冬木透 音楽作品(2021.02.28)
- 『波の盆』 倉本聰 脚本・実相寺昭雄 監督・武満徹 音楽・笠智衆 主演作品(2021.02.27)
- いろいろな「二・二六」(2021.02.26)
- 『ユメ十夜』実相寺昭雄・松尾スズキ・天野喜孝ほか(2021.02.22)
- 『レモンのような女 第2話 私は私―アクチュアルな女―より』 実相寺昭雄監督・岸恵子主演作品(2021.02.20)
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 『地球防衛軍』 本多猪四郎監督・円谷英二特技監督作品(2021.02.19)
- 『妙な線路大研究 東京篇』 竹内正浩 (実業之日本社)(2021.02.01)
- スメル山噴火(2021.01.21)
- 『芸術は宗教の母なり~耀盌に見る王仁三郎の世界~』 (出口飛鳥)(2021.01.14)
- ありがとう寺・ありがとう神社(2021.01.03)
コメント
お久しぶりです。
最近、聴く音楽はクラシックばかり。
(しかも必要にかられてばかりの。)
フジファブリックの新譜になぜか背を向け、
黙々と鍵盤に向かっている日々です。
でも先日、「フジフジ富士Q」のDVDを観たくなって
観てどうしようもない気持ちになって。
今回の記事、ガツンときました。
昨日、高校のクラス会に行って
様々な気持ちになってもいたんだろう、
心地いい落ち込みに。
何か私も聴こう、私から何かを聴こう。
それから先日のウィントン・マルサリスの練習12則の記事、なんか嬉しくなって
手帳に書き写しました。
投稿: Yuzuki | 2012.06.10 16:31
メレンゲのアルバム、ぜひ聴いてみます。
先日新生フジの徒然流線ツアーのライブに行ってきました。4年ぶりの熊本でのライブでした。志村節はないけど、あの新生フジの明るさやまっすぐさには強く胸を打たれました。志村君を大好きな人ほど新生フジのライブを見て欲しいと思いました。メンバーみんなとても前を見て試行錯誤しながら頑張ってます。「夜明けのビート」の最初の「1、2、3」 はCDで聴くみたいに志村君の声を流して演奏が始まりましたし、「NAGISAにて」の演奏もありました。志村君の歌しか聴けないという人はライブに行って欲しい。もや〜としたものがみんなふっとぶから。あの三人から志村君を感じることができます。切ないくらいに感じます。でも、しっかり前を見ています。
投稿: まちゅ | 2012.06.19 10:52