大善寺 日光・月光菩薩像 (山梨県立博物館シンボル展)
素晴らしい。お近くの方はぜひ。
山梨には本当に素晴らしいお寺がたくさんあり、仏像はじめその収蔵物にも見るべきものがたくさんあります。
6年前、同じく県立博物館で行われた『祈りのかたち−甲斐の信仰−』には本当に驚きました。なぜ、こんな流刑地に(笑)。
このブログでも何度か書いてきましたが、甲斐という国は非常に興味深い宗教的歴史を持っています。信じられないくらい濃厚で独特な宗教的土壌が形成されています。
その理由は非常に奥深く、また複雑でありますが、まあ一言で言うのなら、「かい(甲斐・峡・交ひ)」という国自体が、一種のマージナル・ゾーン(生黄泉…半分あの世)であり、それぞれの時代の中央(奈良・京・鎌倉・江戸)などから、ある意味恐れられ畏れられる存在であったということでしょう。
この勝沼の大善寺の日光・月光菩薩像もすごい。素晴らしい。国の重要文化財に指定されていますが、正直国宝級でしょう。ちなみに大善寺はその本堂が国宝に指定されています。
これはたしかに「慶派」の造形ですな。左右のシンメトリーとアシンメトリーのバランスが絶妙すぎます。
とは言え、本来ならこの比較的大きな両像の間には、さらに大きな丈六の薬師如来像が座っており、つまり薬師三尊像であったはずで、そういう意味では実は総体としての魅力は半減以下になっているものと思われます。
しかし、それでもこの両像の魅力の次元は高い。その微妙に腰をひねって中央に傾いた姿態には、その間に崇高なるモノの存在を想像させるに余りある力学が働いています。まさに空間、空白、虚空の美とはこのことでありましょう。
解説等では触れられていませんでしたが、両像には明らかに陰陽の対比も施されていると感じました。つまり、日光が男性(陽)、月光が女性(陰)ということです。
正面からの画像では分かりにくい、というか、両像とも見事なまでにシェイプ(カーブ)されたウエストなのですが、これが側面から見ると、非常に対照的な造形になっていることが分かります。
日光菩薩はどっしりと分厚い奥行きを持った腰つき、月光菩薩は比較的薄く華奢な腰つきになっているんですね。
さらに私は胸のふくらみに注目しましたよ。両像とも豊かな胸の盛り上がりを持っているのですが、明らかにそのデザインの意図は違うなと感じました。
それぞれ右胸が衣から半分こぼれているのですが、日光菩薩の方は、いかにも胸筋といった感じで、衣の圧力を跳ね返す力強さを持っており、月光菩薩の方は、衣に押されて形の崩れた、すなわち柔和な乳房を思わせるデザインになっていました。どちらにもちょっとドキドキさせられます(笑)。
いや、本当に素晴らしい仏像です。これを常設展とともに500円で拝観できるのですから、これは行かない手はないと思いますよ。
今回の修復の際に発見された「納入品」(って言うんですね)も興味深かった。仏様のハンコ捺しまくり(笑)。こういう趣味、いや文化、いや信仰の形もあったんですね。なんかカワイイというかなんというか。一生懸命スタンプしている人の姿が目に浮かびました。
25日まで展示されていますのでぜひ。
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