十勝岳噴火か
今日(すなわち2012年前半)も終わろうかという時間に、ある人から情報が飛び込んできました。
「十勝岳が噴火してるよ。見てごらん」
おおっ、これはたしかに噴火だ。溶岩流れ出してる。
と思ったら、あとで気象庁は「火山性微動や地震、空振は観測されておらず、噴火ではないと判断。火口付近の硫黄や火山ガスが燃えたとみている」と発表。なるほど、そうとも言えるか。なんだか原発の時の大本営発表に似てるような(苦笑)。
はっきり言えば、噴火にはいろいろな種類があり、じわじわと溶岩が漏れ出し、微動や空振が観測されないこともあります。
もちろん、この画像は高感度カメラによるものであり、実際にはこのようには見えていないでしょうから、気象庁の言うとおりだとも考えられます。
しかし、そうだとしても、硫黄や火山ガスがかなり大量に発生し、それが発火しやすい状況になっているのはたしかです。
そうすると思い出すのは、十勝岳の大正噴火です。記憶がはっきりしていなかったので調べてみました。
中央防災会議の報告書から抜粋してみます。
1926(大正15)年5月24日、十勝岳が噴火を起こし、高温の岩屑なだれが発生し、残雪を溶かし25分あまりで山麓の富良野原野まで泥流が到達した。寒冷地で積雪期に起こる噴火災害の典型的な事例である。
1923(大正12)年6月、溶融硫黄の沼が出現し硫黄鉱山の硫黄生産量が増加するなど、大噴火前の3年間には火山活動が活発化し、噴火直前にはその頻度が非常に高くなった。5月24日正午過ぎに1回目の爆発、小規模な泥流が発生した。2回目の爆発では、火口から2.4㎞の鉱山事務所に1分未満で、25分余りで火口25㎞の上富良野原野に到達した。
お読みになって分かるように、最初の兆候は3年前の大正12年6月に確認されました。とにかく硫黄が増加するところがスタートなわけですね。それから微動や地震や噴気ということでしょう。
今回もまた、そのスタートなのかもしれません。今後数年間、要観察です。
そして、皆さんお気づきと思いますが、大正12年と言えば、そう関東大震災の年です。関東大地震が発生した3ヶ月前に十勝岳の活動が始まっているのです。
だからと言って、今年の9月か10月にも関東大地震が起きるとか、そういう単純な話ではありませんが、日本列島全体で考えた時、大地震と火山噴火は互いに影響しあっている、それもかなり遠距離でも関係があるというのは事実です。
今回の十勝岳の現象も、当然昨年の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の影響と考えられます。あれだけの動きがあったわけですから当然です。自然というのは、私たちの感覚を大きく超えて、ダイナミックな(空間と時間の)スケールで動いているものです。
そうすると、当然、我が家のある富士山も何らかの動きがあっておかしくありませんね。3.11の震源からの距離で言えば、十勝岳より富士山の方が近いですし。
富士山は今日山開き前夜祭。そして明日はいよいよ山開きです。今では各種行事は形式的、あるいは観光的なものになってしまっていますが、本来は「山の神」の領域に踏み込む際の禊神事でありました。昔の人は山の怖さを知っていたのでしょう。
ちなみに十勝岳の山開きは6月17日でした。その時は全く火山活動の兆候などなかったと思います。富士山も今日は静穏ですが、半月後はどうなっているか分かりませんね。そういう覚悟だけはちゃんとしておいた方がいいと思います。そして、無事に登山ができたり、私のように生活ができたりしていることに、普通に感謝しなければいけません。
十勝岳の神様の動向に注目です。
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