『赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼』(講談社)
今年は天文イヤーであるとともにフェルメール・イヤーです。「手紙を読む青衣の女」「手紙を書く女」「手紙を書く女と召使い」「真珠の首飾りの少女」「真珠の耳飾りの少女」…なんか悔しい(笑)。私、ブームになるずっとずっと前からフェルメールファンだったんですよ。
あんまり知られていませんが(?)、私、子どもの頃は美術畑の人間になると思っていたんです。音楽に出会ってしまうまでは、完全に美術人間でした。どこで逆転したのかなあ。高校の時かなあ。
高校の時、芸術科目の選択は音楽ではなく美術でした。そして、当時その高校の成績は10段階評価だったんですが、唯一ずっと10を取ったのは美術だけでした。次がたぶん地学の9、政経の8とかでしょうか。ちなみに国語はいろいろありましたが平均して7くらいだったような記憶があります。最低は数学と化学の3っていうのがあったな、たしか(笑)。で、今、国語のセンセイ。
ま、自分の自慢話(?)はいいとして、とにかくそんな高校時代からフェルメールの絵が好きだったんです。それまでは印象派のシスレーの風景画が好きで、何枚か模写したりしていました。それが、あの「デルフトの眺望」を何かで見て、それはそれは衝撃を受けたわけですよ。
今思うと何に衝撃を受けたのか、あまりよく分からないのですが、とにかく理屈抜きに「これはすごい」と感じてしまったのです。それで、図書館か何かでフェルメールの作品全集を見ましてね、そして、彼が決して風景画家ではなかったことを知ったわけです。
ちょうどバロック音楽に目覚めた頃でしたし、なんでしょうねえ、やはり「バロック的」な何かに反応したのでしょうか。もちろん、描かれた古楽器群にも萌え萌えでしたけれども、やはりそれ以上に、うん、やっぱり高校生というお年頃だったせいもあってか、女性たちにキュンキュンきてしまったのですね。
ま、今でもけっこうドキドキします。つまり、バロック的なコントラストですかね。明暗とかじゃなくて、物語と科学とか感情と論理のコントラスト、バランスがいいのだと思います。あとはそのウソ臭さですね。
そのへんに関しては2008年に初めて生フェルメールに触れた時の記事にも書いてありますね。けっこう厳しいことも書いてるな(笑)。なるほどスヴェーリンクか。
そんなわけで、今年はちょっとしたフェルメール・ブームが起きていまして、本屋さんに行くとまあたくさんの便乗本(失礼)が並んでいること。悪いことではないのですが、単なるブームになってしまうとしたら、なんとも哀しいですねえ。日本人ってそういうところが多分にありますから。
もし1冊選ぶとしたら、絶対これです。赤瀬川原平さんの本です。そう、もともと私にフェルメールの見方を教えてくれたのは赤瀬川センセイであります。赤瀬川さんの美術系の本はどれも面白い。ある意味、絵画におけるフィクション性やトンデモ性を楽しんでおられるからだと思います。
ま、とにかく、今年はなんとしても「真珠の耳飾りの少女」だけにはご対面しておこうかしら。あの瞳に見つめられたいような…。
Amazon 赤瀬川原平が読み解く全作品 フェルメールの眼
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