「目には青葉山ほととぎす初かつお」の句碑(北杜市上教来石)
今日は車を取りに駒ヶ根に行きました。また杖突峠を越えました。
1ヶ月で3回諏訪方面に出かけております。いろいろあるんですよ。引き寄せられるように。そのへんについてはもう少し勉強してから書きますね。とりあえず、俗っぽい言い方をすると「ヤバい」っていう感じです(笑)。
で、今日は途中山梨県(甲斐の国)と長野県(信濃の国)の県境(まさに国界と言います)付近で撮影したある「目には青葉山ほととぎす初かつお」の句碑を紹介しましょう。
この句、皆さんよくご存知ですよね。作者の山口素堂の名を知らずとも、この俳句はほとんどの日本人が聞いたことがあるのではないでしょうか。
まあ、これも語るといろいろあるんですが、実はワタクシ「山口」と、ここ(教来石)の出身とも言われる俳人山口素堂とは、どうも因縁がありそうなのです。また、そこに諏訪信仰も関わってくるし、諏訪信仰と富士信仰の交接も予感される。どうにも深みにはまりそうな感じなのであります。
とりあえず、そのへんは置いといてですね、この句の紹介、季節的にはちょうど良かったかな。まさに初夏を感じさせる名物を並べた句ですからね。そんな分かりやすさから人気も出たのでしょうね。
たしか初出は「目には青葉山郭公はつ鰹」という表記だったと思います。この方が漢字と平仮名のバランスがいいですね。シンメトリーになっている。
この句碑では上記のような表記になっています。ほととぎすの「ぎ」は「ぎ」と書いているので、「はつがつお」とは読まないで、あえて「はつかつお」としたのでしょう。
ちなみに歴史的仮名遣いに従うなら、「かつお」は「かつを」とすべきですから、これもあえて現代仮名遣いを採用したととるべきでしょう。
さて、いったいこれを書いたのは誰か。実は今日の記事はここがポイントです。写真をよく見て下さい。
「越山 田中角栄 書」
そうです。なななんと、この句をしたためたのはかの田中角栄なのです。「越山」とは角栄さんの雅号です。越山会もそこからつけられた名です。
そして、その隣、もうお分かりですね。
「世話人 金丸信」
今となっては、実に味わい深い(笑)お二人ではありませんか。すごいですよねえ。
金丸信は現南アルプス市、旧白根町、もっと古く言えば中巨摩郡今諏訪の出身です。直接、教来石とは関係がないと思われますが、田中角栄まで引っ張りだすとは、何か裏があるのではないかと勘ぐってしまいます。
まあ、全国田舎に行けば行くほど、こういう政治家の手による大仰な石碑が鎮座したりしてますからね。単にカネと名誉と開発の利害関係によって造られたものでありましょう。
しかし、金丸信が「今諏訪」の出身だというのは面白い事実ですよね。本家諏訪地方にもけっこう頻繁に出入りしていたようですし、リニア実験線を山梨に誘致した際にも、将来的には諏訪を迂回させるつもりだったという噂もあります。いや、それどころか、国会を諏訪地方に移転させようと目論んでいたという伝説も…(笑)。
昭和58年といえば中曽根内閣の時代。田中と金丸の関係も微妙な時期ですよねえ。ある時期の軋轢を越えて、ようやく仲直りを始めた頃でしょうか。そう考えると、このなんとものどかな句の味わいも変わって見えてくるというものです。
この句碑は20号線沿いにありますが、今は立ち入り禁止になっている場所にあるので、近づいて鑑賞することができません。古くはドライブインがあり、少し前まではセブンイレブンがあった場所ですが、空き店舗とこの碑が空しく建っているだけです。なんとも時代の流れを感じます。諸行無常。
ところで、この句碑の近くには、この句を刻んだ碑がほかにもいくつかあります。中には「目に青葉」と誤っているものもあったり(笑)。
「目に青葉」では全く味わいのない句になってしまいますね。字余りが豊かな青葉を想起させる効果があるとともに、選択的にとりあげることを表す「は」という係助詞(副助詞)を使うことによって、言外に「耳には」「口には」「心には」を含ませているわけですから(たぶん)。
皆さんもお近くを通った際にはぜひ見てみてください。いろいろな歴史と念が刻まれた石碑です。
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